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□ドSな王子に恋してる
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7月8日、9時55分。
私ってえらい。ちゃんと待ち合わせ時間より前に来て待ってる。
「…でも、気合いいれすぎた?」
昨日は今日の準備をするために、屯所ではなく万事屋に帰った。
いつもの隊服姿とは違って、髪は下ろして着物は丈の短いのを着てみた。
私服でもこんな格好しないんだけど…妙ちゃんが着せるからさ。
『あら、名前ちゃん帰ってたの?』
『あ、妙ちゃん!うん。今日は休みだから』
『あら…もしかしてデートかしら?沖田くんと』
『へ……//』
『それならコレ着ていきなさい?私がお客様からもらったものよ』
『で、でも…妙ちゃんのでしょ?それにこんな高そうなもの…』
『着ていきましょうね?』
『……はい』
そんなこんなで、メイクまでされてしまった。
妙ちゃん楽しそうだったなー。一瞬総悟みたいな顔がちらついたけど。さすが同じドS系。
「随分早いんですねィ」
「え……うわっ!?」
聞きなれた声に反応して、顔をあげれば総悟の顔が目の前にあった。
「い、いつからいたの!?」
「さっきでィ。つーか…毎回そういう反応すると飽きてきやす」
「だってそれは総悟が…」
って、あれ?総悟何を見て…
「ぎょわっ!?なにすんの!!」
短い着物の丈をなんのためらいもなく総悟がめくるもんだから、思わずまた変な声がでた。
「いや…よくその太ェ足だせるなーと思って」
「失礼だな!この太さは筋肉なんだからしょうがないでしょ!!」
なんなのこの扱い。私って彼女だよね?私たちって恋人同士だよね?
甘い雰囲気のカケラもないんですが。
「ほら、とっとと行きやすぜ」
「はいはい…」
褒め言葉なしですか。メイクとかしてるんだけどなー。
でも、手は繋いでくれるんだね総悟。
「そういえば今日どうするの?どこ行くの?」
「買い物でいいんじゃねーですかィ?」
「予定決めてきてないんですかィ」
あ、口調うつっちまった。
「とりあえずブラブラしてりゃァいいじゃねーか」
「まぁいいけど」
「じゃあ、行きやすぜ」
そう行って総悟は歩き始める。手はしっかりと繋いだまま。
***
「あ、この服可愛い〜」
「なんでィ。名前でもそういうのに一応興味あるのか」
「いちいちムカつくなぁ。私だって一応可愛いものとかには興味あるんですー」
「ふーん?でも名前には豚の着ぐるみとかの方が似合うんじゃねェか?可愛いと思う」
「嫌がらせ?せめてもうちょっと可愛いのにしてくれよ」
「豚だって可愛いじゃねーか」
「総悟が言うと違う意味で聞こえる」
そんな会話をしながら、何個かの店を見てきたんだけどさ。
恋人同士の雰囲気がない!完璧これ友達と遊びに来たノリだよ。
まぁ、総悟が甘々でも嫌なんだけどさ。せめてもうちょっと甘い雰囲気はほしい。
だって今日は特別な日だし。
「(腕でもまわしてみようかな…)」
「なにさっきから人のことジロジロ見てんでィ」
「べ!別にぃー!?」
「っと…そこ、寄っていいか?」
「いいけど……何を買うの?」
なんか生活用品の店に入った総悟。一体此処に何の用があるんだろ?
「……ねぇ」
「なんでィ。あ、これ良さそうだな…」
「あのさ、つかぬことを聞いてもいい?」
「だからなんでィ。とっとと言え」
「それさ…何に使うの?」
だって普通聞くでしょ?
五寸釘とトンカチって…大工さんか、何か作るのが趣味な人しか買わないよ。
総悟はどう見たってそういう趣味はなさそう。
「もしかして拷問の道具とか?」
「物騒なこと言うんじゃねーやい。それは土方さんの担当だろ」
「そうだけど…だからこそ何に使うの」
「……ジョギング」
「は?」
なんかはぐらかされたけど、大体予想はついた。土方さん…大丈夫かな。
「あ、外だんだん暗くなってきたね」
「もう6時半だからな」
「ホントだ…」
随分時間経つの早いな。てか、私まだ言えてないんだよね。
……待ってるのかな?総悟。
「あの…さ、総」
「キャアアアアアア!!」
「え…!?」
突然女の人の叫び声が下の階の方から聞こえてきた。