君だけの妹

□ベルトコンベアーには気をつけよう
1ページ/7ページ




夏の定番と言えばなんでしょう?


冷えたスイカ?キンキンのかき氷やアイス?

それとも夜空に咲く大輪の花火?


いえいえ。そんなものはこのむさくるしい真選組には縁がありません。


真選組の夏の定番と言えば――……


―ベルトコンベアーには気をつけよう―

「あれは…今日みたいに蚊が沢山飛んでる暑い夜だったねぇ…」


1人の稲村という隊士が語り始めたもの。

それは今屯所で(なぜか)流行ってる…怪談だ。


他の隊士さんに誘われて断れず、怪談を聞いてるんだけど・・・


「・・・;;」


もう既にヤバいんですけど!怖い…私、怖いもの本っ気で無理なのに……;

そろそろ震えだしてきた頃には、話は赤い着物の女の話へ。


うぅ…怖いよ…ていうか話しかけないでよ…。


物語はどうやらクライマックスらへんらしい。


「そしたらさその女…ニヤッと笑ってさ…」


ここで全員が息をのむのがわかった。

そして・・・


「マヨネーズが足りないんだけどぉ〜…」


という声が、いきなり後ろから聞こえた。


・・・。


「「ギャアアアアアアアア!!」」


「キャアアアアアアアア!!」



周りの人につられて思わず叫んでしまった。


やだやだやだやだやだ〜〜!南無阿弥陀仏〜…;;


ここで今まで消えていた電気がつけられた。

そして、さっきの声の正体は…


「副長なんてことしてくれたんですか!?」


「お…兄ちゃん……;」


なんと自分の兄だった。

私は安堵感からなのか、思うように力が入らなかった。


ど、どうしよ…腰抜けちゃったかも…;


しばらくその場に座り込んでいると、お兄ちゃんと目があった。


「・・・おい、桜まで巻き込んだ奴は誰だ?理由によっちゃあ…斬るぜ?


「「すんませんでしたァアアアア!!」」


お兄ちゃんの言葉に、隊士たちが頭を下げた。

斬ることに関しては、一応保留になったみたい。


「つーかマヨネーズ買っとけって言っただろーが!」


お兄ちゃん…マヨネーズがなかったからあんな台詞を言ってたんだ。

って…ん?なんか誰かいないような…


「局長ォオオオ!!」


突然近くのほうからそんな声が聞こえた。


「大変だ!局長がマヨネーズで倒れやがった!!」


「最悪だァアアアア!!」


「え…こ、近藤さん!?」


まさかお兄ちゃん+マヨで倒れちゃったの?さすがにそれはないよ近藤さん!!


「・・・って;」


駆け寄りたいんだけど、私も腰が抜けてるんだった…。


「たくっ…近藤さんも何やってんだか」


お兄ちゃんは呆れた顔をして、私の近くに来た。


「桜、オメーもとっとと寝ろ。女がこんな遅い時間まで野郎と一緒にいたらマズイだろうが」


「あ・・・ご、ごめんなさい…」


お兄ちゃんの鋭い指摘にシュンとなってしまった。


「(たくっ…これだから甘やかしたくなるんだよな…//)わかったら自分の部屋に戻れ」


「う、うん…」


お兄ちゃん、そうしたいのは山々なんだけどね……。


「…どうした?震えてんぞ」


私の様子に気が付いたお兄ちゃんは目線を低くしてくれた。


「あ・・・なんかちょっと怖くて…寝れない、かも……」


情けないとは思うんだけど、でも怖いものはやっぱり怖い。


そんな私にお兄ちゃんは手を握ってくれた。


「え・・・お兄ちゃん…?」


「俺は妹を見捨てるような兄貴じゃねえからな…、今日だけだぞ」


「今日だけ?」


…って、なにがだろう?


「怖いんなら、俺の部屋に来て寝ればいいだろ」


ちょっと恥ずかしそうにお兄ちゃんはそう言った。

恐怖で怯えていたあたしにとって、その台詞は凄く嬉しいものだった。


「お兄ちゃん!!」


「おわっΣ」


嬉しさで気持ちがこみ上げてきた私は、思わず抱きついてしまった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ