君だけの妹
□女の化粧ってホントに怖い
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「暇だな・・・」
今日はけっしてサボりってわけではなく、純粋にお休みの日。
だけど普段忙しいから時間があると、使い方がわからなくなる。
「買い物…って気分でもないし、遊びに行くって気分でもないなー」
でもこうやってダラダラしてるのも飽きてきた。
…万事屋にでも行ってみようかな?
でも、お兄ちゃんに怒られそうだし・・・。
「とりあえず外行こう」
刀を腰にさして、私は玄関に向かった。
「あれ?桜ちゃんお出かけ?」
「あ、退くん!」
門近くに行くと、そこにはミントンのラケットを持った退くんが。
…相変わらずミントンか。お兄ちゃんに見られたら怒られるだろうな……。
「ちょっとお散歩に行くだけなんだけどね」
「そっかー、今度一緒にミントンでもやらない?」
「ミントンか…うん!じゃあ今度お願い!」
「それじゃ…っと、ごめん;俺もそろそろ仕事だ」
「お兄ちゃんに怒られないようにね?」
「う、うん…じゃあね!」
ちょっと顔をひきつらせた退くんが足早に去っていった。
お兄ちゃん退くんに対して容赦ないからなぁ・・・そりゃ怖いよね。
とりあえず適当に歩いてみる。
だけどやっぱり、退屈で退屈で・・・
「あぁ・・・駄目だ」
しかも刀持ってるから変な目で見られるし。
「え?女なのに攘夷志士?」みたいな視線を向けてくるんだよね、皆。
「やっぱり万事屋行っちゃおうかなー…」
怒られるの覚悟で万事屋をめざそうとしたら、携帯が突然鳴った。
「タイミング悪っ…て、お妙ちゃん?」
ディスプレイに表示されている名前がお妙ちゃんとわかり、急いで電話に出る。
「もしもし?どうしたの、お妙ちゃん」
「≪急に電話してゴメンね?今電話しても大丈夫だったかしら?≫」
「うん。今日はちょうど仕事休みだから」
「≪本当!?ちょうど良かったわ!!≫」
「・・・?」
どうしてお妙ちゃん、こんなに喜んでるんだろう。
「≪桜ちゃんにちょっと頼みたいことがあるのよ。だから、私の仕事先まで来てくれるかしら?≫」
「仕事先って…確か“スナックすまいる”ってお店だよね?」
「≪ええ、待ってるわね≫」
「うん!近いからすぐに行くよ!!」
電話を切った後、私はすぐにスナックすまいるに向かった。
あー…これで退屈しなくてすみそう!良かった〜!
というわけで、スナックすまいるに来ちゃいました。
「こんにちはー…」
わわ…スナックなんて初めて入る。
てか、ここって…いわゆるキャバクラの部類に入るんだよね。
「あら?(可愛い子…)まだお店は始まってないわよ?」
「あ・・・えっと…」
店に入ると、茶色の髪のショートカットのお姉さんがいた。
「もしかして!バイトかしら?」
「バイ・・・っ!?ち、違います!」
「え…そうなの」
なんであんな残念そうなんだろ。
とりあえず、お妙ちゃんを探そう。
「あの…お妙ちゃん、いますか?」
「お妙?あぁ、お妙ならスタッフルームにいるわよ」
「あ、私お妙ちゃんに呼ばれてきたんですけど…」
「そうだったの!じゃあ、今すぐ案内するわ」
お妙・・・って呼んでるぐらいだから、きっと仲がいいんだね。
キャバ譲仲間かな?
「お妙!可愛いお客さんが来てるわよ!」
「(可愛い…?)こんにちは…」
「桜ちゃん!早かったわね!!」
私を見るなり、お妙ちゃんは私を抱き締めてきた。
「わわ…お妙ちゃん!?」
「来てくれてうれしいわ!」
「お妙、この子って…?すっごい可愛いけど」
「ふふ私のお友達よ」
友達・・・。
なんか照れくさいけど、嬉しいな。
「そうなの…!あ、私はお妙と一緒にこの店で働いてるおりょうよ」
「あ・・・はじめまして!土方桜って言います!」
「ひじ…かた…?」
ん?どうしてそんな目を見開くんだろ。
しかもチラチラ何か見てる。
「も、もしかして…真選組の土方さんの…奥さん?」
「「・・・」」
その時、全世界中の人が凍りついたような感覚に陥った。
「え…えぇええええ!?ち、違いますから!!断じて違います!!!」
「あら?違うの?」
「もうーおりょうちゃんたら。そんな冗談はやめてよね」
笑顔で言ってるけどお妙ちゃんが怖いのは無視しておこう。
「苗字が同じなのは兄妹だからですよ。私、土方十四郎の妹なんです」
「え・・・!?あの土方さんの?」
あの…って、そんなに驚くことなんだ。
「でも妹ってことはわかったけど…なんで刀を持ってるの?」
「あ、私も真選組の隊士なんです」
「えぇっ!?お、女の子なのに!」
「これでも強いんですよ〜」
そんな風には見えない、といったような目でおりょうさんは見てくる。
…うーん、まあいいけどね。とりあえず、最初の目的に戻ろう。