君だけの妹

□目に見えない大切なもの
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「桜、デートに行きやせんか?」


「………え?」


≪デート≫
男女が日時を決めて会うこと

そう辞書には書いてあったような気がする。だけどそれは辞書的な意味で、一般的にいえば。

デート、とは男女が出かけること。または彼カノと呼ばれる2人がいちゃつきながら街を出歩くことを意とするわけで。


「ぐだぐだしてねーで行きやすぜ」


「え、あ、ままま待って!せめてもうちょっと準備させて!!」


だって私今さっき起きたばっかりなんだよー!?


***


皆さんこんにちは。いきなりですが皆さんはデートコースといえば何を思い浮かべますか?

代表的なものといえばショッピング、遊園地、などなど娯楽のある施設です。
そして今私が来てるここは、娯楽ある施設と言えるのでしょうか。


「バカなにやってんでィ!もっと本気出して戦いやがれ!」


「あーそこはもっと仕掛けるところだろ!?」


「なーにやってんだ!なんの為に主婦やめたんだー!!」


「総悟…これ、なに」


「女子格闘技、だけど?」


あー…そっか。これが格闘技…格闘技。まだ女子ってだけ良かったのかもしれない。


「あれ?桜に…沖田くん」


「あ」


「ん?」


そして早くもデート、というのは消え去ってしまったのでした。
こうなることはわかってたけどね。ムードとかそういうのなんて全く期待なんてしてなかったんだから!

とりあえず格闘技場を出て偶然出会った万事屋一向と話をすることに。


「いやー奇遇ですねェ、旦那たちも女子格闘技がお好きだったとは。俺は特に女どもが醜い姿で掴み合ってる姿が好きなんでィ」


「なんちゅーサディスティックな楽しみ方してんの!?」


総悟…そんな楽しみ方をしてたのか。隣で聞く限り、確かに貶してるような言葉は聞こえてきたけど。

私の隣ではスパンという音が聞こえた。その後に銀さんが口を開く。


「それよりなに?お二人さんは。デート?」


「一応そのつもりだったみたいですが」


「男女が一緒に出かければデートでさァ、それより旦那方。この後俺に付き合いませんかィ?」


「おいおい、俺らともデートか?」


「デートしてんのは桜とだけでィ。そんじゃちょっと付いて来て下せェ」


「あ、」


来る時は繋がれてなかった手を握られ私も強制的に総悟についていくことに。
銀ちゃん達もどうやら付いてくるみたい。

そしてやってきたのは、なんともいえない薄暗いというか怪しい街外れ。


「そ…総悟?一体どこに行くの」


「ここは裏世界の社交場でさァ」


「裏世界?」


「おいおい、そんな危ねーところに連れてくるなんてどういうことなんだ?」


「来ればわかりまさァ。ほら、見てくだせェ」


総悟の視線をたどり一際大きい会場に出た所で真ん中の方を見る。ちょうど鬼の面をした人が相手の侍と勝負をしている所だった。


「ここも闘技場?」


「あながち間違いじゃないけど、ここで行われてるのは…正真証明の、殺し合いでさァ」


総悟の言葉が終わると同時に会場からはあふれんばかりの歓声が。もう一度真ん中に目を向ければ、血を流し倒れている侍。


「なにこれ………」


「こんなことが………」


「真剣での勝負、賭け、こんなおいしいもんに皆飛びつかねえはずがねえ」


「随分と趣味のいい見せもんじゃねーか」


「明らかに違法じゃないですか、沖田さん。あんたそれでも役人ですか」


確かに新八くんの言う通りだ。こういうのを取り締まるのも私たちの仕事。さっきから察するに総悟はけっこう前から知ってるみたいなんだけど。


「役人だから手が出せねえ。こういうもんの後ろには強い権力が見え隠れしてんでさァ」


「強い権力って…まさか幕府関連の人とかかわりが?」


「詳しくはわかんねえ。だからこそ俺達は動くわけにはいかねえ」


動いたら真選組が刃向ってしまったことになるから。だから総悟も手を出さなかったのね。私も真選組だから手を出すことができない。

………すごく、もどかしい。


「言っておくがな、テメーらの為に戦うなんざごめんだぜ」


「あれ、おかしいなあ。あんたは俺と同種だと思ってやしたぜ。こういうもんは、虫酸が走る程嫌いなたちだと」


「総悟………」


「桜もこんだけ嫌ってるのに、それでもダメなんですかィ?」


「え、」


気が付けば私が握っていた手すりが少しだけへこんでいた。

こんな強く握ってたんだ、私。でも私だってこんな不正な殺し合いなんて大嫌いだし、許せない。


「あれを見てくだせえ。この煉獄関最強の闘志、名は鬼道丸。奴を探りゃなにか出るかもしれません」


「おい!」


「心配いりませんよ、こいつは俺の個人的な頼みで真選組は関わっちゃいねえ。ここの所在は俺しか知らねえんでさァ。だからどうかこのことは近藤さんや土方さんには内密に」


総悟が人差し指に手を当て、銀ちゃんに向けて言うとそれきり黙ってしまった。

銀ちゃんはなんだかんだ言いつつきっと動いてくれるんだろうな。
それに総悟も。手が出せないとはいえ、こんなことぐらいで引く奴じゃないし。


「それじゃあ俺らはそろそろ行きやす。ご内密によろしくお願いしやす」


「あ、えっと…銀ちゃんなんかごめんね。それじゃあ、行くね」


「………ああ」


一応頭を下げ神楽ちゃんや新八くんに手を振り総悟の後を追った。
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