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□強さの果て
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※この話はあなたを想うの続きの話となっております。
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やっと見つかった貴方に会うための糸口。
そして私も、夜兎として生きることを決めた。もう、隠したりなんかしない。
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神楽たちの家から出て私は、とりあえず自分の家に戻ることにした。
「えっと…確かこの変に…。あ、あった!」
これを見るのは、星を出て行ったあの日以来だから…8年ぶり。
「まだ着れるかが不安だな…」
そう言って私が眺める物、それはチャイナ服。星にいたころは夜兎の女の人は皆これを着用するのが当たり前みたいになっていた。
8年前、夜兎を捨てた私はこれも着なくなった。
「…懐かしいな。母様から大きいサイズを貰っておいてよかった…」
8年前のじゃ絶対入らないもん…
今、私の年は18歳。8年前はまだ10歳だったんだ……
あの頃のことを思い出しながら、私は髪を結びなおし、傘を持って再び外に出た。
「さてと…まずは春雨についてでも調べようかな…」
春雨に関して調べていたらその内神威のこともわかるだろーし。
「でも…どうやって聞けばいいんだろう…」
春雨のことは一応みんな知ってると思うけど、詳しく知ってるっていったら……
「幕府…とか…キャッ!?」
俯いていたら、誰かに傘ごとぶつかってしまった。
「痛たた…あ、すみま」
「どこ見て歩いてやがんだァ!?」
「え…」
傘をどかして見ると、どうやらぶつかった相手は天人だったらしい。
って…私が言えたモンじゃないけど。私も一応天人だし。
「お前…ぶつかってきたら謝るのが普通だろーが!!」
「は?」
いやいや…悪いの私だけじゃなくね?
「人間ごときが我々天人にはむかおうとはな……」
「…人間ごとき?」
「あぁ!人間みたいな愚かな生き物なんてクズ以外の何物でもないな!!」
「・・・っ」
そう言って楽しそうに嘲笑う天人。…ムカつく。私の怒りが、夜兎の力を高めていく。
人間ごとき?愚か…?そんなの…
「テメェの方が汚ぇ生き方してんじゃねーの…?よっぽど愚かだよ…」
「なっ、何!?貴様…我ら犬猿族にはむかう気か!」
犬猿族…あぁ。犬と猿が合わさったみたいな種族か。私は面白くなってきて思わず笑ってしまった。
「犬猿族…?アハハ!何それ…聞いたことないなぁ…」
「き、貴様ァアアアアア!!」
犬猿族と名乗る天人が私に向かって殴りかかってきた…が。
「ぐっ……」
天人の拳は、私の出した傘によって止められていた。
「おい…犬だが猿だがわかんねぇけどさ…この夜兎族に喧嘩売る気?」
「や、夜兎族…だと!?」
私が夜兎の名を名乗ると同時に、私の傘と容姿をジロジロと見て、顔が青くなっていった。
「私はさァ…夜兎だけど、あまり戦いが好きじゃないんだよ。だから…とっとと失せろよ」
「ヒィイイイイイ!!」
ぶるぶると震え、天人は一目散に逃げ出した。
「天人だからって頭にのって…人間を侮辱することはもっと許せない…」
それにしても…。私はチラッと自分の傘を見た。
「よく抑えられたな…私……」
夜兎の血を自分で制御できたことに、今はとても驚いていた。