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□★イジワルな愛
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素直になれない。それはお互い様だけど…あたしはもっと、言葉で言ってほしいの。
これは、あたしの我が儘ですか?
「ハァ……」
なんて暇なんだろう。
「…ハァ」
…なんて、どんよりした気分なんだろう。
「……ハ「もういい加減やめろォオオオオ!!」
あたしの呟きが大声によりシャットダウンされてしまった。
「…何ですか、土方さん。近所迷惑なんだよコノヤロ―」
「あぁ?誰のせいだと思ってんだ…」
ピクピクと顔をひきつらせ怒りマークをつけている土方さん。
「チッ…マジ死ねよ」
「おーい、今部下には似つかわしくない発言が聞こえたんだが?」
「幻聴じゃないですか?」
「よーし今すぐ刀抜きやがれェエエエエ!!」
「嫌です…痛いし」
***
「おい…名前。いくら総悟と付き合ってるからって、そういう部分まで似なくてもいーんじゃねぇか…?」
「も、元から…こんなんでしょ…」
「そうだったな…」
※お互い少し暴れたため、息が上がってます。
「…で、何をんなに溜息ばかりついてんだ」
「それは……」
あたしは時計をチラッと見た。時刻は深夜1時。
「…待ってるんですよ」
「あぁ?…総悟か」
「他に誰がいるんですか」
あたしがなんでこんな夜中に溜息をついてるかというと、簡単にいえば心配だったから。
「仕方ねぇだろ?今は結構遠出の任務中なんだからよ…」
「わかってます…」
今日、1番隊は攘夷派の1つの党をを潰しに行っている。
…ちなみに、あたしも1番隊なんだけど。行ってないのには理由がある。
「どうして怪我なんかしちゃってるんだろ…」
よりによって、こんな時に。
一昨日市内見回りの時に突然攘夷志士に襲われ、あたしは腕を少し切られた。
それで怪我人は大人しくしてろってことで、置いてかれてしまった。
最悪だ。あの男、一生恨んでやる!
「あのなぁ、離れてるっつったって少しの間だろ?」
あ、土方さんまだいたんだ。
「そうですけど…でも、そういうことじゃないんですよ」
「は?」
確かに、総悟と一緒にいたいっていうのもある。
あたしと離れてる間に他の女が寄ってくるかもしれないし。でも、1番の理由はそうじゃない。
「あたしは…1番隊副隊長です。総悟の背中を任されてるんです!!」
それなのに、守るどころか…
「いつも、あたしは守られてばっかりなんですよ…」
自然とあたしの目に涙がたまっていく。土方さんは、そんなあたしを見て何も言わなかった。
「土方さん…あたし、悔しいです…」
あたしがギュッと拳を握り、唇をかみしめていると、土方さんがあたしの頭に手を置いてきた。
「……?」
「それでいいと俺は思うけどな」
「え……でもあたしは守られてばっかりは…!」
「嫌なんだろ?」
見上げると、土方さんは真っ直ぐこっちを見ていた。
なんでもお見通しといったような顔をして。
「守る守らねぇの話じゃねぇ。…ま、ちゃんと総悟に自分の気持ちを伝えることだな」
ポンポンとあたしの頭を2回優しく叩いて、土方さんは去っていった。
ちゃんと、言葉でか。一番苦手なことかもしれないね。