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□兎の1番の好物
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「あれ…阿伏兎、何してんの?」


「おー名前か。料理作ってるんだよ」


「だから何してんだ、って聞いてるんだけど?」


皆さんご想像してみてください。
あのおじさんで、うっすら髭でいい歳な阿伏兎が…料理ですよ?


「どうしよ…吐き気が…うっ!」


「相変わらず失礼だな…」


俺より後輩のくせによーってなんかブツブツ言ってるけど、無視しよう。


「で?なんでいい歳したおっさんが料理なんかしてるの」


しかも大量に。よかった。まだエプロンとかしてなくて。


「あー?これは団長にやるんだよ」


「団長って…神威団長?」


「あぁ、そうだ」


神威団長に…手作り?しかも手料理?…これは、深く追求しちゃダメだよね?


「…うん、ゴメン。2人末永くお幸せに…」


「ちょっと待て!どうしたらそういう想像にいきつくんだ!?」


「え?だって……。はっ!2人とも…まさか、もっと凄い関係に…!?」


ヤッベ…今度から団長達の部屋に行けないじゃん。


「だから違ぇって!!勝手に話し進めるな!」


「違うのー?なんだつまんないの〜」


「あのなぁ……。コレは団長の誕生日のための料理だ」


「団長の…誕生日?」


「なんだ知らなかったのか?団長の誕生日今日だぜ」


「え…何ですとォオオオオ!?」


知るわけないじゃん!そんなほんわかした会話、団長とするわけないじゃん!!


「なんで阿伏兎は知ってるの!?」


「春雨内じゃ有名な話だぜ?団長が前にプレゼント渡さなかった部下、殺したせいでな」


「殺っ……!?」


どうしよ…私、殺される第2の被害者?
私も夜兎族な以上、死というものは慣れてるつもりだけどさ。


「いや、でも…やっぱ死ぬの嫌だなぁ…」


しかも死因がプレゼント渡さなかったからとか、すっごいダサい。なんか死んでから恥かきそう。


「それなら今から何か考えればいいじゃねーか」


「えーでも私は阿伏兎みたいに料理できないし…」


つーか何で阿伏兎は料理できんだよ。キモいんだけど。


「おい、最近の男はみんな料理なんてできて当たり前だぜ?」


「マジでか」


「その方がモテるらしいしな」


「……ふーん」


でもそういうのは爽やかな人がやるから良いわけで…
アンタみたいなごっついオジサンにやられてもねぇ。


「絵面だけなら団長似合うかもね」


「あー…絵面だけならな」


「とりあえず料理は却下だとして…どーしよ…」


物をあげるんでも、今から買いに行くんじゃ間に合わないし。


「いっそのこと自分の体でもやったらどーだ?」


「殺したろか?あ゛?」


「おいおい…冗談だって。お前さんが言うと、本気で聞こえるからやめろ」


んだと…?団長の方がよっぽど怖いじゃないか!!


「つか、私と団長はそういう関係じゃないんでできません。ただの上司と部下です」


「普段は仲良さそうにしてんじゃねーか」


「プライベートではね。普通に接しなきゃ殺すって言われてるから」


いやー…あの時はマジで怖かったね。
てか、なんであの人はすぐに殺すなんて恐ろしい言葉を言うんだろ。
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