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□恋心チョコレート
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「ちくしょー、バレンタインなんて滅びちまえ」
どうせあたしはバレンタインなんてうはうはした乙女のイベントなんて縁がないですよ!
そんな寂しい文句を内心でいいながら、帰り支度を始める。
夕暮れの教室に、残された女子1人。告白にはとっても最適な雰囲気は抜群。だけど、もちろんあたしには関係ない。
「………むしろ、最近失恋したし」
ずっと好きだった人がいた。でも、その人には彼女ができてしまった。最後に彼は、お前のおかげだよ!ありがとな!と笑顔で去っていった。
あれから毎日彼と彼女が仲良く歩く姿を見かけるようになった。
あーあ。虚しくなるだけだし、もう帰ろう。でもこの夕暮れ時を一人で帰るなんて嫌だな。すごく居心地悪いじゃん。
予想通り、校舎を出てみればチョコを持った女の子がいたり、初々しく頬を染めて手をつないでるできたてカップルがいたりする。
「羨ましくなんてないし…」
そうだよ。別にバレンタインがすべてじゃないし。
そう言い聞かせて、校門めがけて歩いて行こうとしたら、どん!と誰かがぶつかってきた。
「わ、なっ」
「あ………っ、ご、ごめんなさ………ぃ」
「あ、」
少しだけ頭を下げるとその子は落ちていたカバンを拾い、校門に向かって走って行った。
思わず動揺しちゃった。だって、すごい本気で泣いてるんだもん、今の子。可愛い子だったな。あんな子をふった人でもいるのか?
女の子が去っていった方を見ながら、足もとに何か落ちているのがチラッと見えた。それをよく見れば、可愛らしい袋。
「………って!これってチョコ!?」
それを拾い上げ中身を覗いてみれば確かにチョコだった。
チョコケーキだよね?ちょっと崩れちゃってる。と、後もう1つなにか落ちて………。
「メッセージカード?」
これは見ちゃいけないだろう、と思って拾ってすぐチョコが入った紙袋に入れようとしたら、表に書いてあった名前だけはどうしても見てしまった。
そこに書いてあったのはあたしでも知ってる、うちの学校の有名人。