君だけの妹

□出会い、そして別れ
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「行かないで…」


俺は桜から思わず目をそらした。そしてそのまま病室を出た。


「……やっぱり俺…」


『桜Side』


「(あれ…?)」


目を覚ますと真っ白な天井。つんとするような独特の匂い。


「(ここどこだろ?私は確か…興奮しすぎて倒れちゃって…)」


そっか。ここ……病院だ。


「ちょっと外に出ようかな…」


点滴を持って私は少し廊下の方に歩いていった。


「全く…あの子は優しすぎるのよ」


「桜の気持ちもわかるが、でも十四郎だって…」


え?今の声って…父上と母上?

身を隠してチラッと廊下を見ると、父上と母上が話をしていた。


「(なに…?私と、十四郎お兄ちゃんの話?)」


「それで、十四郎はどこに行ったんだ?」


「電話してくるって言ってたわ」


「ふむ…なら十四郎に話してみるか。江戸に行かないと言ったこと、考え直してみろって」


え、ていうことは…お兄ちゃんは江戸に行かないの?じゃあ私はお兄ちゃんと一緒にいられるんだ!!

嬉しくなった私は、お兄ちゃんを探しに行った。


「(確か母上はお兄ちゃんは電話しに行くって言ってたから…あっ!)」


少し歩くとすぐにお兄ちゃんのことを見つけられた。

よかった…お兄ちゃん、考えなおしてくれて。


「お…」


「すみません、近藤さん。はい…もう少しだけ時間を……」


私はその場で停止した。それは、電話してるお兄ちゃんの表情を見たから。

お兄ちゃんの表情は、とても明るいといえる表所ではなかった。


「……ふぅ」


電話を終えたのか、お兄ちゃんは近くの椅子に腰をかけた。だけど、やはりお兄ちゃんの表情は晴れない。

どうして…私はこの場から動けないんだろう。嬉しいなら、お兄ちゃん胸に飛び込めばいいじゃない。
嬉しいはずなのに…苦しい。


「(お兄ちゃん……江戸行きをやめようとしてるは、やっぱり…)」


「……桜?」


「っっ!」


驚いて前を見ると、お兄ちゃんがこっちを見ていた。


「(やば、バレちゃった……)」


「なにしてんだよ、んな所で。こいよ」


「う、うん……」


いつもの私なら飛びつくのに。今はできない。逆に、今は目も合わせられない。


「おまえ大丈夫なのか?目ぇ、覚めたばっかだろ?」


「う、うん……」


私は俯きながら話をしている。
いつもと違う様子に気がついたのか、お兄ちゃんは何も喋らなくなった。


「(き、気まずい…)」


まぁ、そんな雰囲気にさせたのは私なんだけどね……。
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