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□優しい嘘
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「何するんですかィ!痛って…」


「おまえが悪いと俺は思うがな」


「うるせェや。土方にんなこと言われたくないでさァ」


「いい度胸だ総悟!よーし、刀を抜け!!」


襖の向こうから土方さんと総悟が喧嘩してる声が聞こえる。


「…総悟のバカ…」


ドキドキしすぎて、涙が出てきた。

昨日からなんなのアイツは。いつもみたくからかってきたと思ったら、急に抱きしめたり…


「…心臓もたないんですけど」


それから私は着物に着替えて自室を出た。


「あ、おい苗字」


「へ!あ、土方さんでしたか…」


「何をそんなに驚いてんだ」


「だって、あの…」


「…大丈夫だ。俺はなにがあったとか別に聞かねーから」


「ち、違います!それになにもなかったんですから!」


「そうなのか?」


全く…やっぱり誤解してたのか。


「それで?何か用ですか」


「あぁ、ちょっと注意してほしいことがあってな」


「注意してほしいこと?」


もしかして昨日の人のことがなんかわかったのかな…


「昨日のやつについてはわかんなかったがな」


…人の心を勝手によまないでほしい。


「江戸で最近女ばかり狙う不審者がでてるんだ。今朝方で5人目の死者がでた」


「え…」


「しかもその女全員、綺麗だとか可愛いとか評判だった女らしいぞ」


「へぇ…そうなんですか」


じゃあ私は大丈夫だよね。


「…あのなぁ。俺はおまえだから忠告してやってんだぞ?」


「え?てゆーか!だから人の心の中を勝手に…!!」


「おまえは自分のこと可愛いとか思ってねーかもしんねーけど、おまえは自覚をもて。江戸で大人気のモデルってことをな」


じゃあな、と言って土方さんはそのまま行ってしまった。

なんか言い逃げされた気分なんですけど。ていうか無視ですか。あーもう!!こんな気分じゃだめだ!買い物でもしてこようかなぁ…


「あれ?苗字ちゃんどこか行くの?」


「退くん!」


庭の方を見ると退くんがミントンのラケットを持って立っていた。


「うん、ちょっと気分転換。退くんは、ミントンやってたの?」


「そうそう。俺もちょっと気分転か―…」


「山崎ィイイイ!テメーは何してやがんだ!!」


「ぎゃあああ」


「あーあ…」


退くんはそのまま土方さんから逃げて行った。

毎回毎回よくやるよなぁ、あの2人も。…そういえば総悟がいない。珍しく市中見回りでもやってるのかな。


「まぁいいか。出掛けよーっと」
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