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□俺の糖分
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「銀さ〜ん!んもぉ!いつ起きたのぉー?」
突然背後から、今まで私が聞いたことのない声が聞こえた。
「ゲッ!なんでテメーがここにいんだよ!」
「なんでって…わかりきったこと言っちゃって!もぉ、さっちゃん照れちゃうぞ!」
声の主は、さっきまで銀ちゃんと一緒に布団にいた、あの美人さんだった。
「(銀ちゃん…凄く焦ってる…)」
そうだよね。本命の彼女に他の女といる所を見られちゃったんだもん……
その時、女の人が私をジッと見てきた。
「ん、誰?この子。まさか…!私と銀さんの恋路を邪魔しにきた害虫!?」
「っ!」
さらに私の胸がズキっと痛む。ダメだ…私…もう……
「てめぇ何言ってやがんだ!名前、コイツは「……して……」え?」
「離してよ!!」
「なっ」
銀ちゃんの手を振り払い、私は距離を置いた。
「名前……?」
「もうわかんないよ……。他に大切な人がいるならそう言ってくれればよかったのに…」
「何言ってんだ!俺は「言い訳なんて聞きたくない!!」
あまりのショックで混乱していた私には、もう自分自身を止めることができなかった。
「銀ちゃんなんか嫌い!大っ嫌い!!」
「名前!!!」
私はそのまま逃げるように万事屋から出ていった。
***
「ここ、どこだろ…?」
あれからただ無我夢中で走りぬけた。気がつくとそこは見たことない場所。辺りを見渡せば、遊具で遊ぶ子供たち。どこかの公園…かな……?
「…ちょっと休もう……」
私は近くのベンチに腰をかけた。走ってる途中で涙はいつの間にか消えていた。
さっきの、最後に思わず言った言葉…銀ちゃんなんて嫌い!大っ嫌い!!……か。
その言葉を言った時の銀ちゃんの顔を思い出してしまった。
胸が痛む…。あの時の銀ちゃん、今まで見たことない程、寂しそうな顔してた。
「……っ。やだ、また……」
私の目からは、また涙があふれ出てきた。
涙って…ホントによくでるなぁ。枯れることを知らないんだね。
「…私、最低だよ……」
私が浮気相手かもしれないのに、本命の彼女の目の前であんなこと……泣きながら、私はゆっくりと顔をあげた。
「私たち…終わっちゃうのかなぁ……」
あんなに優しい人、きっといないよね。今まであんなに親切にしてくれたのに、最終的には私が裏切った。いや…銀ちゃんが裏切ったの?
不思議と、私の中に怒りという感情はなかった。ただ、悲しくて痛くて、切なくて…自分でもよくわかんない。