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□強さの果て
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今までなら怒りに便乗して、絶対に夜兎の力が目覚めてたのに。
この間、力をかなり解放したから制御がきくようになってきたのかもね…
「…これで、いいんだよね」
夜兎を捨てたつもりだったけど、捨てきれないなら…理由のために戦えばいい。私のこの力は…人を殺すものじゃない。
だけど、1つ気がかりなことがあった。
「…昨日の事件…、どうなったんだろう…」
そう。それは、昨日神楽たちと出会った時にあった攘夷志士達の事件。
…あの時、私は夜兎の本能のままに戦ってしまった。
「もしかしたら私…」
あの中の誰かを…殺してしまってるかもしれない。そう思うと胸が痛む。
「〜〜〜っ!あぁー!ダメダメ!!」
自分の頬をベチベチと叩いた。こんなことでくよくよしてちゃダメだ!
とりあえず今は春雨の情報をつかむことだけを気にしなきゃ!
「よーし…行くぞ!」
「待ちな」
「えっ…?」
その場から動こうとしたら、突然腕を掴まれてしまった。手の感じからして…男のようだ。
だ…誰……?
恐る恐る傘を持ったまま後ろを振り返ると、そこに立っていたのは、黒髪でめちゃくちゃ瞳孔開いて、煙草吸ってる人だった。
「(怖っ!見た目超怖っ…。でも、この服は確か……)」
「ん…?おまえ、万事屋のところのチャイナ娘…じゃねえ…?」
「あっ!し、真選組…!?」
「は?」
思い出した所で、口に出して叫んでしまった。
し、しまったァアア!つい口に出しちゃった…ていうか、チャイナ娘って…
「もしかして…神楽のこと…言ってたりします?」
「神楽…?あぁ、そういやそんな名前だった気がするな」
この人、万事屋って言ってたよね…。そういえば銀さん達の家にそんな看板があった気が…
「土方さん?どうしやしたかィ?」
また誰かきたよ…。同じ隊服…この人も真選組か。
「いや…コイツがあのチャイナ娘に見えてな…」
「そーいや似てやすね。チャイナ服にその傘…」
「あ…えっとぉ〜…」
なんか嫌な予感がするんですけど…。
「…ちょっと来てもらえますかィ?」
「えっ?ちょっ…!」
「いいですよねィ、土方さん。一応、話を聞くぐらいはしておいた方がいいと思いやすぜ?」
「…そうだな。もしかしたら、コイツかもしれねぇしな」
「は?」
コイツかもしれねぇって…何が?!
抵抗しようとしたけど、ガッチリと手を掴まれてしまって、そのままパトカーに連れ込まれてしまった。
「あ、あの!真選組って警察ですよね!?」
「そうですぜィ」
「こんな連行みたいなことしていいんですか!」
「警察だから許されることなんだよ」
あ、そっか…。じゃなくて!どうして私が連れていかれなきゃいけないのよ!
***
抵抗する間もなく、私は真選組の人に連れられて、屯所という所に連れてこられた。
「(うぅ…ここって、事情聴取部屋…みたいな所だよね…?)」
「それじゃ、今からいくつか質問すっから正確に答えろよ」
「は、はい…」
そう言って私の前の席に座るのは、さっきの黒髪の人。その近くには栗色の可愛らしい男の子が立っている。
「とりあえず俺達の名前から言っておくが…俺は土方十四朗。副長をやってる」
「俺は沖田総悟でさァ。真の副長は俺ですぜィ」
「…はい?」
真の副長……??
「あぁー…気にすんな。こっちは1番隊隊長だ」
あ、悪ふざけ…か。変な人たちだな。
「じゃあ、とりあえず名前を教えろ」
「えっと…名前です」
「…苗字もだ」
私をギッと素直に答えろ、と言ってるように睨んできた。
「(怖っ…)だ、だから名前です!名前しかありません!」
「…まぁいい。率直に言う。昨日の事件…知ってるか?」
「昨日の…事件…?」
…まさか、昨日の事件って……
「昨日、歌舞伎町で殺人事件があった。犯人は攘夷志士であることがわかった。…が、その攘夷志士たちも他の誰かにボッコボコにされてたんだよ」
私の体から嫌な汗が大量に流れてくる。これって…やっぱり……。
「目撃者によれば、珍しい感じの傘に面白い色の髪と瞳をした女だってことだった。だから、俺達は万事屋のチャイナ娘だと思ったんだが…」
ここでジッと私のことを見てきた。
「…アンタ、名前でしたっけィ?面白い身なりをしてるんですねェ…」
「…っ!」
そう言って、沖田さん…が私の傘や髪をジロジロとみてきた。
あぁ…警察が捜索してるってことは、やっぱり私…殺しちゃったのかな?例え攘夷志士だとしても…私は…ここは、素直に言おう…。
「なぁ、お前はなにか知っ「ごめんなさい!!!」えっ!?」
「…突然何をしてるんですかィ……あんた」
「何って…土下座です!!」
絶対に捕まると思った私は、先手必勝ってことで、とりあえず土下座して謝った。