Short
□強さの果て
3ページ/11ページ
「…土下座するってことは…やっぱりお前が…!」
「…はい」
私は目を閉じた。ここは戦場じゃないから人を殺すことは罪に値する。
グッと拳を握り締めて、決めた。
「そうです…私が、攘夷志士たちを殺「そうか!君だったのか――!!」
・・・あれ?今さっきまで聞こえなかった声が聞こえて…
「って、ギャアアアア!ゴリラ風の天人ォオオオ!?」
「えええええええ!違うからァアアアア!!」
だ、だってどう見たってゴリラ…。
私が動揺していると、土方…さんが肩に手をおいてきた。
「落ち着け名前。あれはゴリラでも天人でもねぇ。…真選組局長の近藤さんだ」
「え…きょ、局長…?」
この完璧ゴリラみたいな人が…局長!!?
「…グスン」
「あっ…なんかスミマセン……」
近藤さんという人はちょっと涙目になっていた。…それはそうと。
「あの…私を逮捕しないんですか…?」
「は?」
土方さんに聞くと、顔をしかめられた。え、あれ?どうしてそんな顔を…。
「だ、だって…私は昨日攘夷志士を次々に倒しちゃったから事情聴取してたんじゃ…?」
「別に逮捕目的でそんなこと聞いたわけじゃねぇよ」
「…え?」
じゃ、じゃあなんで事情聴取なんか…?
「近藤さんがですねェ、攘夷志士を倒してくれたおかげで捕まえやすくなったから、その人に礼がしたい。っていうから、捜索してたんでさァ」
「お、お礼…ですか?」
そんな…お礼なんて…。
「お礼なんてやめてください!だって…私、あの人たちを殺しちゃって…」
「「は?」」
今度は沖田さんも一緒に顔をしかめた。・・・あれぇ?
「殺すって…なんのことだ?攘夷志士たちは血だらけだったが、死んではいないぜ?」
「…えっ!?」
「重症なやつもいやすが、命に別状はありやせんぜィ」
「う、嘘……」
私はその場にぺたりと座りこんだ。どうして夜兎の血で錯乱してた私の攻撃を受けて死んでなかったの…?
…もしかして、私…弱くなった?
「8年間の…スランプ……?」
そういえば治癒能力も遅くなってたし…。
座り込み俯く私を気にかけてくれたのか、土方さんが手を差し伸べてくれた。
「とりあえず、こっから出るぞ…」
そう言って私の手を握って立たせてくれた。
「…ありがとうございます」
いまだ私は、自分の力のことを考えていた。しばらく土方さんたちについていくと、1つの部屋に入れられた。
応接室…とかかな?
「大丈夫ですかィ?」
「えっ…」
俯いていると、沖田さんがいつの間にか私の隣で心配そうに見ていた。
「あっ…は、はい…」
必死で笑顔を作ってみたけど、ダメだったみたい。
「名前って…チャイナに似てやすけど…性格は全然違うんですねィ」
「え?」
私と…神楽が似てる…?
「その身なりとか傘とか…なんか雰囲気が似てるっつーか…」
あぁ、なるほど…。そう言えば、私はまだこの人たちに、自分が夜兎族であることを話しなかった。
…言って、いいよね…。
「似てるのは当り前ですよ。私たちは、同じ種族ですから…」
「同じ…種族?」
3人とも頭に?をうかべていた。まぁ、無理もないか。
「私と神楽は…戦闘種族、夜兎族なんです」
「なっ…夜兎族だって…?」
「はい、そうです。傘と容姿が似てるのはそのせいでしょう。肌とかも夜兎の特徴なんで」
「あぁ…なるほどな」
土方さんは納得したように私を見た。
「でも…あのチャイナはともかく名前が夜兎っていうのは…合いやせんねェ…」
「…そうだね、よく言われるかも」
「「っ!//」」
なんか2人がちょっと顔を赤くしてる…心も少し動揺してるけど、なんでだろ?
「ま、まぁ…あれだな。そんな顔でも昨日の攘夷志士を倒すだけの力はやっぱあるってことだな…」
「そうですねィ…全然そんな風に見えやせんが」
沖田さんはまだ言うのか。…でも、なんか嬉しいな…。夜兎っていうのを知ってもなお、普通に話してくれるのは…。
「ん?どうかしやしたか、名前」
「…ううん。ただ、なんかホッとして…」
なんだかこの人たちは銀さんたちの雰囲気に似てる。ホント、優しい人ばかりだな…
「なぁ…名前は戦場に立ったりはしねーのか?」
「・・・え」
土方さんの率直な質問に驚いてしまった。
「イヤ…戦闘種族っていうぐらいだから、しょっちゅう戦ってるのかと思ってさ…」
「そういうことですか…」
やっぱり、夜兎=戦闘ってイメージが強いのかな…。
まあ戦闘種族ってぐらいだから、しょうがないのかもね…。
「私は夜兎だけど戦うのあまり好きじゃなくて…だから、地球にいるんです」
「へぇ…戦闘が嫌いな夜兎…珍しいねィ…」
ホントにそうだよね…母様だって父様だって、普段は優しい人でも戦場を好んでいた。どんな形でも、夜兎は戦場に生きる者。
それが…私たちの運命―…
「でも、嫌いにもなると俺は思うがな」
「っ!」
聞こえた言葉に、驚いて目を丸くした。
「こ、近藤さん…?」
今まで黙っていた近藤さんがやっとのことで口を開いたと思ったら、そんなことを言ったので私は驚いた。