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□★イジワルな愛
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「土方さんってば、カッコつけちゃって…」


でも、まぁ一応お礼を言っておきますかね。いつの間にか、涙も止まってるし。


「…でも、やっぱ暇だよぉ〜」


ちょっと外出歩いちゃおうかな…

そう思って腕をついたら、手に鈍い痛みがはしった。


「っ!」


痛たた…やっぱ手は完治してないのか。

あたしは怪我をしてない方の手をついて、そっと立ち上がった。


「うっ…でも脚もちょっと痛いかも…」


色んなところ切られたからな…ホント情けないよ…1番隊のくせに。


「……ハァ」


駄目だ。このまま色んなことを考えてたら、ノイローゼになりそう。

あたしは静かに部屋を出た。…と、その瞬間……


「っ!?な、なに…この匂い…」


強烈な、でも慣れた匂いが漂ってきた。そうだ、この匂いは…血の匂いだ…。


「もしかして…」


あたしは痛みを無視して、匂いがするほうに走った。

この嫌な感じがする。もしかして!


「ハァ…っ!!」


匂いが強くなった所で、あたしは止まった。

そんなあたしの視線が捉えたものは、床で倒れている人物。


「そ…総悟!!!」


床で倒れているのは総悟だった。あたしはすぐに駆け寄った。


「総悟…総悟!しっかりして!!」


ひざに頭をのせ、声をかけてみた。見ると隊服や刀にはビッシリと血の跡がついていた。


「総悟……目を覚ましてよ」


「………」


返事がない。

この血が総悟のものなのか、返り血なのか、わからないけど……。

他のみんなは?1番隊の他のみんなはどこにいるの?


「名前さん!」


「あ…ザ、ザキ……?」


「来てたんですね…手間がはぶけました!」


「え?」


「実はついさっき1番隊の人たちが帰ってきて、かなりの…死者や怪我人を出したようです」


「・・・えっ」


その瞬間、あたしの涙がピタッと止まった。


「敵が天人の武器をたくさん持っていて…なんとか潰すことができたようですが、こちらもかなりの被害が……」


「ザキ…他の皆は?」


あたしは震えながらもそう聞いた。副隊長として仲間のことも凄く心配だ。


「他の人はすでに運び、今から治療です。…名前さん。沖田隊長をお願いできますか?」


「もちろんだよ!!」


あたしがそう言うと、ザキはわかっていたように笑い立ち去ろうとした。


「じゃあ、手当てのほうお願いします!」


そうだよ。今は泣いてる場合なんかじゃない…!


「ザキ!!」


「はい?」


あたしはスッと、立ち上がり真っ直ぐザキを見た。


「皆のこと…よろしくね」


「……はい!」


そう返事をして、ザキは去っていった。


「よし…」


あたしは総悟の肩をかついで、歩きだした。とりあえず総悟の部屋に行こう。傷の手当てをしなくちゃ。

体の痛みも忘れて、私は総悟の部屋に歩いていった。
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