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□雪姫
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「それに、私を真選組に突き出した所で、私ごとアンタらも切られると思うよ?」


「なっ……!」


私が、総悟と付き合う時に自ら出した申し出。

もしも私が人質にされたときは…迷わず見捨ててくれという。


「(これでいいんだよね…)」


総悟や皆の重荷になるぐらいなら、私は死ぬことを選ぶ。

あーぁ…なんでクリスマスに死ななきゃいけないんだろ。

これも、総悟を好きになった私のせい?でも、好きにならなきゃよかったなんて思えない。


「いい度胸だ女ぁ…先にあの世に行ってな!!」


男たちの手が振り上げられる。

後悔なんてない…なんて、カッコよくはきめられないけど。でも、せめて…もう1度だけ貴方に会いたかった。


「総悟……」


死の覚悟を決めた私の耳に次の瞬間聞こえたのは、聞きなれた爆発音だった。


「えっ……?」


そして煙の中から現れたのは、私が驚く人物だった。


「……おい、何してんでィテメーら…」


私の頬を涙が伝う。どうして、ここにいるの…?


「総悟……」


「そいつから、手ェ離せ…」


その時の総悟は、今までにないくらい殺気を出していた。

総悟…本気で怒ってる。


「ふん…やっとお出ましかよ」


「おい、お前が沖田総悟だな?コイツの命を救ってほしいなら…」


そう言って刀をつきつける奴ら。…だけど、それより早くに、真っ赤な液体が飛び散った。

まさに一瞬のことだった。


「そいつから。名前から手ェ離せって…言っただろ?」


「「なっ……」」


今の総悟は、鋭い目つきで獲物を狙う鷹のようだった。


「…ひ、怯むな!!1人でなにができっ…!!」


「がはっ!!」


男が大声をあげた瞬間、もう1人の男も斬られ倒れた。

え…?でも、今は総悟は切ってないよね。


「誰が1人って言ったんだ?」


「えっ……」


この声って…まさか……!

後ろを振り返ると、そこには見慣れた集団が集まっていた。


「なんで…真選組のみんなまで…?」


よく知る顔ぶれ。土方さんや近藤さんまでもがいた。


「こ、これは…」


「残念だったな。お前らの行動はこっちはもう予測ずみだったんだよ」


「くそっ!!」


「だが、誤りも少しばかりありやしてねェ…」


チャキっと、総悟が刀をかまえる。

そしてドサッという音と共に、男が倒れた。


「テメェらが名前に傷をつけたことでィ……」


「総悟……」


それから、真選組の隊士によって男たちの死体は運ばれていった。

私は少し落ち着くまで真選組の車の中で休ませてもらっている。

私って、こんな弱かったんだな。何が大丈夫だよ。こんなの……。


「名前、入りやすぜ…」


少し控え目に入ってきたのは、まだ血を全身に纏った総悟だった。


「……うん」


入ってきた総悟の姿を、思わず凝視してしまう。


「……ごめん」


「……えっ」


総悟が…謝ってる…?


「ど、どうして謝るの……?」


「…作戦だったんでィ。今日のこと…」


「!!」


作戦……?そういえば、土方さんが予測済みとか言ってたっけ。


「俺は…猛反対したんだけど、奴らは何人もの幕府関係者を殺してる。野放しにしてるわけにはいかないって…」


総悟が、ずっと下を向いたまま話す。

……手が震えてる。


「奴らが…名前に手を出すだろうって。そこを…」


「そこを狙って、殺すチャンスを…伺ってた、ってこと?」


驚いたように顔をあげた総悟の顔は、今にも泣き出しそうな顔だった。
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