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□雪姫
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「そうでィ……」


…そっか。だから皆、来てくれたんだ…。


「…名前、やっぱり俺と…」


「総悟の…バカ!」


私の体が勝手に総悟の体を抱き締めていた。


「名前……?」


「バカだよ…本当。バカぁ…!!」


総悟もバカだけど、もっとバカは…私だよ…。


「別れよう、なんて…言わないでよ…」


「…!」


「私は別に怒ってもないし、嫌いになんてならない…」


ううん、そうじゃない。嫌いになんて…なれないよ。


「確かに怖かったよ。アイツら自身も、殺されそうになった時も…殺す側の総悟も」


私がそう言うと、総悟がピクッと反応した。だけど、私の話をちゃんと聞いてくれている。


「作戦のせいとか、作戦じゃないとか…関係ない。私ね、殺されてもいいって思ってた」


「っ……!」


私はひたすら総悟の顔をまっすぐ見つめた。


「それが…私の覚悟だって。総悟の恋人になる時に決めたことだから」


だけど、実際は足手まといになっちゃったけどね。


「それなのに…どうして、助けにきちゃったの…?」


私は足手まといになりたくなかったからそういう約束をしたのに。


「これじゃあ私…ただのお荷物だよ!」


「…名前」


「え……!?」


私が言葉を言っている途中で、突然唇に柔らかい感触。

…これって、私、キス…されてる?


「…かやろう…」


「え……今、なんて…?」


「バカ野郎!!」


「!?」


初めて聞いたかと思うほど…大きな声。その後力強く抱き締められる。


総悟…すっごい怒ってる。しかも震えてる…?


「あの…総悟……?」


「そ、総悟!あの…離して」


「離すわけねーだろ…。誰が死んでもいいだって…?ふざけんな!!」


「っ!!」


「ホント大バカでィ…お前は」


大バカって…、でも私は…。


「それが約束だったんだよ?私が…総悟の恋人になる為の…」


それって、ある意味契約みたいなもんだし。破ったらいけないものでしょ?


「んなの、本気で信じてたのは名前ぐらいでィ」


「…は?」


え、わ…私ぐらい…って?


「そのまんまの意味でさァ。そんなめんどくさい契約するぐらいなら、付き合わせるわけねェだろ」


「えぇ!?」


え、だって…あの時!しっかり、「分かった。お前が危ねェ時は…迷わず見捨てる」って言ってたよ!


「あのな、名前。俺達は侍なんでィ」


「……侍?」


総悟は私と少し距離をおいた。


「侍ってもんはな、戦に勝っても、守りたいもん守れなきゃ負けなんでィ」


「勝っても…負け?」


「そう。そんな俺らが、大切なもの見捨てるわけねェだろ?」


た、大切なものって……。


「総悟だけなら分かるけど…真選組の皆にとって私は別に…」


「大切な存在だよ」


私の言葉をつぶすような言葉が後ろから聞こえた。


「近藤さん…土方さん…?」


「なんでィ…俺のいい場面を邪魔するつもりですかィ?」


「そんなんじゃねぇよ」


そう言って土方さんは、いつも通り煙草をふかせていた。


「ただな…」


そしてジッと私のことを見てきた。
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