空の蒼に華舞う桜

□空の蒼に華舞う桜
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『ーー都の権力者、左大臣藤原道長の、隠された姫の存在』




この噂が広がりを見せたのは、昌浩と彰子が出会い、様々な経験を繰り返し、暫くぶりに落ち着いた日々を過ごしていた時のことであったーー。








◆ ◆ ◆ ◆






「聞いたか?左大臣の一の姫は中宮じゃないらしい!」

内裏の一角でその言葉は放たれた。

「はっ?お前何を言ってるんだ」

その言葉を受け取った男は同僚の男の言葉に怪訝に顔をしかめた。

「ついこないだ立后した姫が一の姫だと皆言っていただろ」

左大臣が手をかけて育て、入内させたのはつい最近のこと。これで、左大臣家は安泰だと誰かが言っていたのは記憶に古くない。

「俺は、聞いたんだよ!」

興奮ぎみに鼻息荒く言葉を吐き出す同僚に男は息をついた。

「聞いたって、なぁ…」

誰に、と男は口の中で呟いた。もしも居たとしても確認のしようがない定かではない噂。それが時の権力者、藤原氏の耳に入ったならばーー非常に大変なことになる。
男はとにかく声量を落とせと口許に指を当てる仕草をした。が、男は嬉々とした表情で口を開いた。




「俺は確かに聞いたんだ!左大臣家にはもう一人一の姫が、大君が居る、と――」




こうして時を経たずして、内裏を中心に貴族の間から藤原一の姫の噂が流れ始めた。

それが定かではなくとも、噂というものは尾ひれはひれがついてどこからともなく伝わるもので。稀代の大陰陽師が住む、安倍邸も例外ではなかった。









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