雲と嵐の恋愛事情

□H
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「にしても凄い傷だな」

「うるせぇよ」



嵐戦が終わった後、俺は病院に運ばれた

とは言っても普通の医者に診てもらう訳にもいかねぇ

かと言ってシャマルが診る訳もない


必然的に跳ね馬の世話になっちまった




「今、ロマーリオ呼んでるからな」

「こんな傷たいしたことねーよ」

「そういう訳にはいかねーだろ。傷だらけのままだとツナが心配するぜ?」

「うっ…」



その名を出されると逆らえねぇ



「なぁ、隼人」

「なんだよ、つーか名前で呼ぶな」

「お前はツナが大切か?」

「…?当たり前だろ?」

「じゃあ、恭弥は?」

「っ!?」



どうしてそこで……雲雀の名前が出て来るんだ?



「さっき、恭弥から電話があったんだ。お前の様子、聞いてきた。心配、してたみたいだぜ」

「なんで…雲雀が…?」

「わからないか?」

「わかんねぇよ!!!」



あいつが俺を心配する理由なんかねぇ



「なぁ、隼人。お前がツナを大切に思うのはいいことだと思う。実際、俺の部下だって俺の事を大切に思ってくれてる。でも、あいつらには他に愛すべき家族がいる。俺以外にも大切な人がいる。
お前はそれを悪い事だと思うのか?」

「そんなことは…」

「だったらお前も、ツナ以外に大切な人がいたっていいんだ。大切な人は一人じゃなくていい」

「大切な…人」



直ぐに雲雀の顔が浮かんだ



守りたいと思うのは10代目だ

側に居たいと願うのも…


それは一生変わらない




でも、側に居て欲しいと願うのは?



それは……――――






「なんか邪魔みたいだからいったん席はずすな」

「は?」



そう言って跳ね馬が病室を出ると、入れ違いに雲雀が入ってきた





「ひばっ…」

「ずいぶんボロボロだね」

「うるせぇよ。馬鹿にしてんのか?」

「違うよ。誰にやられたの?」

「は?ベルとか言う天才とか呼ばれてる奴だけど…」

「ふぅん。天才ね」



そういうと雲雀は俺の顎をとり、無理矢理顔を向かせた



「よかった」

「な、にが…だよ」

「さっき会った時は君、僕のこと見てなかったから」

「っ!?」



さっき…とは嵐戦の後の事だろう

確かにあの時の俺は、10代目のことしか考えてなかった


雲雀のことは考えないようにしていた





「隼人が無事で、よかった」



再び呼ばれた名前


でも、そんなことより驚いたのは……塞がれて、いた



俺の唇が、雲雀の唇で





キス、されてる?





「んっ……ひばっ…!」




意味も分からず、ただ求められるままに雲雀に唇を奪われた


でも、不思議と嫌悪感はない



あるのは羞恥心と、鳴り止まない心臓の鼓動






ようやく唇が離れた頃にはすっかり息があがってしまった




「抵抗…しなかったね」

「なっ!?///」

「抵抗されたら、諦められるかとも思ったんだけど……残念だったね、もう諦めてあげない」












「君が好きだよ」







大切な人は一人じゃなくていい――



その時、跳ね馬の言葉が頭を過ぎった本当の意味を




俺はもう、気付いていた






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