雲と嵐の恋愛事情

□M
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『本気かい、沢田綱吉?』

『本気です。これ以外に世界を救う方法はない。協力して下さい、ヒバリさん』

『……隼人にも、何も話さないの?』

『…きっと、獄寺君は反対するだろうから…』

『だろうね…。いいよ、協力してあげる』

『本当ですか!?』

『勘違いしないでよ、君の為とか世界の為じゃない』

『わかってます、貴方はいつだって並盛と……獄寺君の為に戦う人ですから…――』







違うよ沢田綱吉、君はわかってない


僕は隼人の為に戦っているんじゃない

自分の為だ


ただ、自分が隼人を失いたくない……それだけだ…――













「こんなに、小さかったんだね」



電光のγとの戦いで深手を負った隼人と山本武は、ボンゴレ地下アジトにある医務室へ運ばれた

そして、沢田綱吉が山本武の元へ行ってる間、僕は隼人の元へ訪れた




「ごめんね、隼人」



僕がもっと早く駆け付けていれば、こんなに傷つかなくて済んだのに

彼を守るのは僕だと、10年前に誓ったのに…




「獄寺の様子はどうだ、ヒバリ」

「…赤ん坊」



気配もなく現れた赤ん坊に、僕は隼人に伸ばしていた手を引っ込めた



「別に隠さなくてもいいぞ。お前らの関係は気付いてる」

「10年前はまだ…そういう関係じゃなかったはずだけど?」

「まだってことはこの時代はそういう関係なんだな」

「さぁね。例えそうだとしても、今目の前にいる隼人とこの世界の隼人は別人だから」




この子が僕を選んでくれるとは限らない

この子は僕の知ってる隼人ではないのだから


未来に来たという経験が、今後の隼人の運命を大きく変えることになる

それでも君は、最後には僕を選んでくれるだろうか…?





「だが、獄寺の未来を守る為にヒバリは此処にいるんだろ?」

「クスッ、赤ん坊も沢田綱吉と似たような事を言うんだね。その答えはノーだよ」

「……」

「僕はいつだって、自分の為に生きている」




隼人が側にいる未来を勝ち取る為に此処にいる


例えそれを隼人が望んでいなくとも、変わらない







「どこ行くんだ?」



突然立ち上がって医務室を出ようとする僕を、赤ん坊が呼び掛けた



「そろそろ沢田綱吉が来るでしょ?出直すよ」

「そうか。そのツナのことでヒバリに頼みがあるんだ」

「頼み?」

「ツナの家庭教師になってくれねーか?ツナも山本も……獄寺も、もっとレベルアップしねぇとこの先を生き残れねぇ」

「……ちなみに、彼には誰が?」

「ビアンキだ」

「そう……いいよ、沢田綱吉は咬み殺したいと思ってた所だ」



君のせいで隼人が悲しんだからね

その罪は重いよ、沢田綱吉




「意外だな。獄寺に付きたがると思ってたぞ」

「今、隼人に必要なのは僕じゃない」



"姉"という存在を乗り越えなければ、隼人は強くなれない





「フッ、よく分かってるな、獄寺のこと」



その言葉にクスリと笑みを返して、僕は医務室を後にした



当たり前でしょ?

10年もの間、彼を見つめてきたのだから



だから分かる

今の隼人に必要なのは僕じゃない



それは自身の姉とか、守るべき沢田綱吉とか……そして、自信過剰かもしれないけど、彼を支えられるのは…10年前の僕、なんだろう



だからもう、必要以上に隼人に近づいたりしない

感情に任せて、触れたりしない




僕は僕の隼人を取り戻す


その為に僕は、此処にいる…―――




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