雲と嵐の恋愛事情

□N
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「え…、ヒバリが?」

「うん。ヒバリさんが獄寺君と山本を助けてくれたんだよ」




γとの戦いに敗れ、気を失っていた俺

そして目を覚まして10代目に教えていただいた、真実



(あれは…夢じゃなかったんだ)



気を失う前に見た、ヒバリの姿

夢か幻か、俺の願望だと思っていた




「今度ちゃんとヒバリさんにお礼言わなきゃね」

「…そう、ですね」




そういえば俺、黒曜の時も、ヴァリアーの時も…ヒバリに助けられてばっかだったのに、お礼なんて言ったことなかったな…


情けねぇ

俺、ヒバリになんも伝えられてねぇじゃん


ありがとうも、……好き、だってことも




(せめて、礼くらい言わなきゃな)




今度会ったら礼を言おう、そう決意した


しかし修業が始まり、ヒバリがボンゴレのアジトにいる時はほとんど10代目に付きっきり

修業が終わった後も、側には草壁がいたりで二人っきりにはなれなかった




それだけじゃない


ヒバリは一度も、俺を見ない

目を合わせないどころか、まるで俺がいることにも気付いてないかのように、俺に目を向ける事はなかった…――


















 
「なんなんだよ……」




イライラする


姉貴との修業も上手くいかない

俺の頭を占領する、愛しい母と、憎らしい父


そして、俺にまるで興味がないような、この時代のヒバリ



もう、頭ん中ぐちゃぐちゃだ

食事も喉を通らず、日に日にストレスと焦りばかりが増えていた


このままじゃマズイ、そう思って俺はベットから抜け出した

もうすぐ夕飯を済ませた10代目が戻ってくる頃だ

こんな情けない姿を見せるわけにはいかない


10代目もヒバリとの修業で疲れているのに、俺のことで煩わせたくない



俺は一人になれる場所を求めて部屋を出た






足が重い

最近まともに飯を食ってないせいか、フラフラする


視界が揺らぐ




強くなるって、決めたのに

10代目をちゃんと守れるくらい強く


ヒバリが、安心して背中を任せてくれるくらい強くなるって、決めたのに






すると突然、視界が真っ黒に染まった

それと同時に訪れた浮遊感



俺、倒れたのか?

でもなんだ…この温もり



すげぇ、あったけぇ…







「こんな所でなにしてるの、獄寺隼人」



低音の声が俺の頭に響いた

慌てて顔を上げると、倒れかけた俺の身体を支えるヒバリの姿




「ヒ、バリ…」

「君、痩せすぎじゃない?食事は?」

「あ…、食ってねぇ」



ヒバリが小さなため息をついた


久しぶりだ。こうしてヒバリと会話するの

未来に飛ばされる直前に逢った以来だ



あの日から、鳴るわけのない携帯をずっと眺めてた

10年前の世界で、ヒバリは何をしているんだろうか?


少しは心配したり、探したりしてくれてるんだろうか?

そんな事ばかり考えていた




「…出来れば君とは、関わりたくなかったんだけど」

「っ…!」




やっぱり…

ヒバリは意図的に俺を避けていた



分かってたことじゃねぇか

10年前のヒバリが例え俺を好きだったとしても、過去に戻れてヒバリに好きだと伝えられたとしても


俺達の関係が10年も続く保証がどこにある?

ヒバリに愛想つかされない保証がどこにあるというんだ





ほら、その証拠に…ヒバリの温もりが離れていく




「一人で、歩ける?」

「……」



ヒバリの問い掛けに、俺は小さく頷いた



「そう、じゃあ着いてきて」

「え?」

「歩けるんでしょ?それとも僕に担がれたいの?」



ヒバリの言葉がイマイチ理解出来なかった


でも、俺に背を向けて歩き出すヒバリの後を必死に追い掛けた




ヒバリが今、俺に手を差し延べたのは、たまたま側にいただけなのかもしれない

俺じゃなくても、10代目や山本相手でも同じことをするのかもしれない




でも…




例え俺とヒバリの関係が長く続かないのだとしても

俺はあの温もりを失いたくない




ヒバリを、失いたくない…――






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