雲と嵐の恋愛事情

□P
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「お茶漬け?」



風紀財団の施設にある部屋に通され、着替えてくると告げて雲雀が部屋をでていった数分後

草壁がお茶漬けを持って訪れた




「恭さんから消化のいいものをと。最近はろくに食事も取っていないのでしょう?」

「ああ……さんきゅ」



俺は差し出されたお茶漬けを口に入れる

あ……旨い


そういえば最近、味わって飯食うなんてしてなかった

笹川やハルには申し訳なかったな…




「あの、さ。俺が此処に来てもいいのか?不可侵条約があるんじゃ…」

「ああ、問題ありません。貴方はよく無断で出入りしてましたから」

「俺が?」

「貴方以外にも、笹川さんもですが」

「え、芝生も!?」



なんだ…ちょっと俺が特別なのかとも思ったけど、そういう訳ではないのか…



「なんだかんだで恭さんは笹川さんには頭が上がらないんですよ」

「雲雀がー?有り得ねぇだろ?」

「事実ですよ。笹川さんは恭さんの良き相談相手でしたから」

「相談って…雲雀が芝生に何を…」

「それはもちろん…」

「余計な事は言うな、哲」



突然襖が開き、先ほどまでスーツを着ていた雲雀が着物姿で現れた


初めて見るその姿に、俺の心臓がトクンと跳ねる




「哲、もう下がっていい」

「へい」



草壁が部屋を出ると、当然ながら雲雀と二人っきりになった

何か喋らなくてはと、俺は慌てて口を開いた



 
「し、芝生に相談なんて珍しいな!何の相談なんだよ?」

「っ……君には関係ないよ」



そう言って雲雀が顔を背けると、ズキン、と心臓が悲鳴をあげた

そうだよな…雲雀と芝生が二人でなにしてようと、俺には…




「あ、ごめん…。そういう意味じゃないんだ。君にはあまり知られたくなかっただけで…」

「え…?」

「君の事だよ。笹川に相談してたのは」

「お、俺…?」



俺の事を芝生に?



「君をよく知る人物で相談出来るのは彼だけだったんだ。
沢田や跳ね馬に聞くのは屈辱だし、赤ん坊にはからかわれて終わるからね」

「なっ…」




それって…まさか

芝生に恋愛相談、してたって事が?



雲雀が、芝生に……






「プッ…」

「ちょっと、笑わないでよ。だから言いたくなかったんだ」

「だって、お前が芝生に…!想像できねぇ…」

「あのね、第一君だって悪いんだからね。ちょっと喧嘩しただけでヘソまげるし。その度に笹川に怒鳴られる僕の身にもなってよね」

「駄目だ、ツボった…!」

「人の話聞いてないでしょ?」



なんか、久々に笑った気がする

未来に来てからは笑うなんて行為とは無縁だったし…


思いっきり笑ったら、少し頭がスッキリした



「修業、上手くいってないの?」

「え……そ、そんなことねぇよ!?」

「ふーん」

「うっ……嘘だ。あんま上手くいってねぇ…」



なんか、不思議だ

10年前の雲雀相手だったら、きっと最後まで強がってた


でも、この時代の雲雀にはいつもより素直になれる



「10代目の修業はどうだ?」

「さぁ。この時代の彼に比べたらまだまだだけど、最近は何か掴んだみたいだよ」

「そっか…10代目も頑張ってるんだな」



だったら俺ものんびりしてられない

早くSISTEMA C.A.Iを完成させないと




「焦る必要はないよ」

「え?」

「焦って空回りするのが、君の昔からの悪い癖だ」

「っ!?」

「沢田は沢田。隼人は隼人だろう?自分のペースで修業しなよ」

「雲雀…」




そうか、わかった…

この時代の雲雀相手に素直になれる理由



俺の知ってる雲雀と同じようで、少し違う

10年前の雲雀は、俺にこんなアドバイスはしない


ただ、黙って俺の前を歩いてる

俺はそれを追い掛けて、追いつきたくて、必死で


だから素直になるなんてなかなか出来ない



俺が好きになったのは、今目の前にいる雲雀じゃない

そう、実感した





「ごちそーさん。サンキューな。なんか色々ふっ切れた」

「そう、ならよかった。君には強くなって貰わなくちゃ困るからね……10年前の僕が」

「そうだよな。俺、まだお前に伝えてねぇことあるしな」



そうだ、こんな所でもたついてなんかいられない


次に会ったら伝えるって決めたんだ




「じゃあな、雲雀。もう、此処には来ない」



だってお前は、俺の好きな雲雀じゃないから


これ以上甘えるなんて出来ない




この時代の俺達の関係がどうなってるかなんてもう気にしない


今はただ、真っすぐに前だけを見よう…



そう決意して雲雀を見ると、雲雀は優しく微笑んでいた…――





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