雲と嵐の恋愛事情

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戦いは終わった



いや、正確にはメローネ基地での戦いが終わった


倒すべき相手だと思っていた入江正一は実は味方で、本当に倒さなきゃいけないのは白蘭だという



この時代の10代目と雲雀と入江だけの秘密だったということは、正直ショックだったが、それがこの世界を守る為だと今は納得も出来る


未来の10代目から新しい匣(チカラ)を授かり、一週間後に控えた戦いに備えて休息をとっている時、それは起きた




「家に……ですか?」

「うん、京子ちゃんとハルが一度帰りたいんだって。もうミルフィオーレもいなくて安全だからっつリボーンが許可してくれたんだけど、獄寺君も一緒に行くでしょ?」

「俺は…」



正直、家に帰りたいとは思わない

昔住んでたアパートに今も住んでるとは思えないし、自分が住んでいたからと言って特別な思い入れがあるわけでもない

ただ、どうしても行きたい場所はあった




「はい!是非ご同行させて頂きます!」
















「じゃあ、俺とビアンキでハルの家に行くので、京子ちゃんをよろしくお願いしますね、お兄さん」

「極限、任せておけ!」

「ガキ達は俺が面倒見るからな」

「うん、お願いね山本」



そう言って去って行く10代目達を見送ると、ランボ達をあやしていた山本が視線を向ける



「俺達、公園に行くけど獄寺も一緒に行くか?」

「はぁ?誰がてめーと子守なんかするか!」

「ははっ!だよな!」



山本はいつものようにヘラヘラと笑うと、手を振りながら公園へと向かった



「頑張れよー」

「え…?」



意味深な発言を残して去って行く山本の背中を、俺は呆然と眺めた

もしかしたらアイツは、全部気づいてるのかも知れない


俺が今から何処に行こうとしてるのか…





山本の背中が見えなくなるのを確認すると、俺は踵を返して並中へと向かった

メローネ基地での戦いの後、雲雀は姿を消した

アイツの事だから心配はしてなかったけど、ようやく再会出来たのにと寂しく思う気持ちもあった



雲雀は、違うんだろうか?

寂しく思ってるのは、俺だけなんだろうか……そう不安が押し寄せる



そんな不安を抱えながら訪れた並中の屋上

意を決して扉を開くと、案の定そこには雲雀の姿があった




「そろそろ来る頃だと思ってたよ」

「…雲雀」



滅多に見る事の出来ない笑顔を向けられ、抱えていた不安が消える




「馬鹿野郎っ……何も知らない癖にいきなり居なくなんなよな!」

「この時代の事ならあらかた草壁に聞いたよ」

「だからって……」

「なに?寂しかった?」

「っ…!」



図星をつかれて、顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる

でも今は、そんなことを気にしてなんかいられない




「雲雀……あのさ、覚えてるか…?」

「何を?」

「そのっ、リボーンさん見つけたら話すって言った事だよ!」



すると雲雀は俺に近付くと、優しく頬に触れた




「忘れてるわけ……ないじゃない」



ドクン、と心臓が悲鳴をあげる

もうダメだ。もう止まらない…――




「っ……好きだ。雲雀が、好きなんだ」



誰かをこんなに好きだと思うなんて、自分でも信じられない




「好きっ、好きだ。雲雀がっ…」

「うん…」

「好きだから…!」

「うん、僕も好きだよ……隼人」



そうして重なった、二度目のキス

初めてキスした時は、まだ自分の気持ちを認められなくて……否、認めるのが怖かった



でも、今は違う


雲雀も、雲雀を好きだと想う気持ちも、全てが愛しい………そう思える




「随分…待たせちまったな」

「本当だよ。罰としてあと100回は好きって言って貰おうかな?」

「なっ!!!」

「ちなみに、1回言うごとにキスも1回ね」

「む、無理に決まってるだろーが!!!」

「無理?君が行方不明になって僕がどれだけ必死に探したと思ってるの?」

「うっ…」

「しかも君は、その間にこの時代の僕と浮気してたんでしょ?」

「浮気はしてねーよ!!いや、確かにちょっと……世話にはなった、けど」



そう言って10年後の雲雀を思い出すと、無意識に頬が赤くなる

それを見た雲雀は、更に機嫌を降下させた




「……お仕置き決定」

「なっ!?待てって!早く10代目達に合流しねぇと…!」

「待たない」




そう言って噛み付くような強引な口づけに、嫌どころか嬉しく感じてる俺は、そうとう末期だ




「んっ……ひ、ばり」

「なに?」

「絶対……一緒に過去へ帰ろう、な。お前の事は、俺が守ってやるから」



すると、雲雀がクスッと笑う



「それは、僕の台詞だよ…――」























「ボス、いつまでのぞき見なんかしてるんですかい?後で恭弥に咬み殺されますよ」

「ロマーリオ…冷たくすんなよ、今の俺は二度目の失恋中なんだからな」

「まだスモーキンに未練があったんですかい?」

「うるさいなぁ。しつこくて悪かったな!でも…」



誰よりも二人の幸せを願っていたのも俺だった

はっきり、そう言える




「よかったな、隼人、恭弥」




これからもお前達には過酷な未来が待っているだろう

挫折したり、擦れ違ったりもするかもしれない



それでも俺は信じてる

どんな未来が待ち受けていたとしても、最後に取るのは互いの手だと…






「さぁ、忙しくなりそうだな」



その為に俺に出来る事があるなら、惜しみ無く力を貸そう



彼らの過去を、そして未来を勝ち取る為に…―――




End...

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