ごくどきっ!

□獄寺家の朝
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ピピピ…ピピピ…



雲一つない清々しい朝

そんななか、携帯のアラーム音が鳴り響いていた



携帯の持ち主である獄寺隼人は、布団から手を伸ばすとアラーム音を止め、再び夢の世界へと誘われた…―――





「隼人!いい加減に起きな!」

「いでっ!?」




……ように思えたが、学ランに身を包み、トンファーを構えた少年により、夢の世界どころか危うく三途の川まで行きそうになっていた





「な、なんすんだよ雲雀!?トンファーで殴んなって言ってんだろ!?」

「こうでもしないと隼人は起きないじゃない。ちゃんと手加減してあげてるでしょ」

「だからってな…!」

「ほら、起きたんなら早く着替えて。勇人さんが待ってるよ」

「うー…」





俺の名前は獄寺隼人。中学2年。

4才の時に両親を事故で亡くし、10歳年の離れた兄貴と二人暮らしをしている。



でも、全然寂しくはない。

俺には兄貴が居るし、両親が残してくれたこの家もある。

そして、隣に住む幼なじみの雲雀は、俺にとってはもう一人の兄弟みたいなもんだしな。







「勇人さん。隼人起きたよ」

「お、悪いな恭弥。いつも任せちまって」

「はよ…兄貴、」

「にょおん」



おっと、もう一人大事な家族が居たんだ。

1年前に俺が捨て猫を拾ってから獄寺家の一員となったのが瓜(命名、オレ)



今となっては俺の大事な家族だ




「瓜もおは…」

「によぉぉぉぉぉ!!!」

「痛っ、引っかくなよ!?」




ただし、瓜は俺に懐いてくれないけど…




「本当、相変わらずだね。瓜はこんなに人懐っこいのにね」

「にょおん♪」

「ほら、瓜。隼人なんかほっといて朝メシだぞー」

「にょ!」

「だからっ!なんで兄貴と雲雀には懐くんだよ!?お前を拾ってやったのは俺だぞ!」

「にょん」

「無視すんな!!!」




あー、もう可愛くねぇ猫!

ったく、誰に似たんだよ!?

え、俺?断じて違うっ!!!




「猫は意外と賢いからね。勇人さんが遅くまで仕事してるの知ってるから、誰のおかげて自分は生きていけるのか理解してるんだよ」

「じゃあ、なんで雲雀にも懐くんだよ?」

「さぁ、人徳の差じゃない?」

「何が人徳だよ!?雲雀なんか武力行使で生徒従わせてるだけだろ!?」

「お前らうるさい。朝から近所迷惑だろ」

「…ごめん」

「っ…」





雲雀は人の言うことは全く聞かな俺様で。いつも俺のこと弟扱いするし、命令口調で暴力ばっかだし…

でも、そんな雲雀が唯一素直に従うのが兄貴だ


兄貴は頭もいいし、家事はなんでも出来る

俺の憧れで自慢の兄であると同時に、コンプレックスの塊だった



兄貴と比べられるのが嫌いで、雲雀なら俺達を比べたりしないって思ってたのに、最近は口を開けば勇人さん勇人さんって……ムカつく






「じゃあ、俺は先に行くから遅刻すんなよ」

「僕が遅刻するわけないでしょ」

「それもそうだ。隼人、戸締まりはきちんと…………隼人?」




不機嫌そうに顔を歪める俺を見て、兄貴が俺の顔を覗き込んだ



「隼人?なんか機嫌悪いな。反抗期か?」



そう言って俺の頭を撫でる兄貴に、俺のイライラは更に増した




「いつまでもガキ扱いすんなっ!俺だってもう14になんだからな!!!」

「……隼人、何に怒ってるのかわからないけど、いってらっしゃいくらい言ってくれよな。
じゃないと俺が一日テンション低くてまともに授業が出来なくなるからな」

「っ………いって、らっしゃい」

「ああ、行ってきます」





わかってるんだ

兄貴はなんも悪くない。こんなのただの八つ当たりだってことくらい。

兄貴はちゃんと俺のこと大切にしてくれてることくらい、ちゃんとわかってる。




でも、なんかイライラするんだ




「隼人、本当にどうしたの?勇人さんに当たるなんて珍しいね…」

「別にっ!なんでもねぇよ。早く朝メシ片付けようぜ」




雲雀が兄貴の名前を口にするたび、心がモヤモヤする。


胸が痛い。



俺、もしかして病気なんだろうか…















―――獄寺隼人、中学2年生



雲雀恭弥に無自覚片想い中




ライバルは実の兄―――









「はぁ、今度シャマルに相談しよう」





 

 

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