ごくどきっ!

□担任と親友(仮)
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「いい、隼人?僕は応接室に行くけど、周りには十分気をつけてね」

「教室行けよ」

「僕は何にも捕われないよ」

「応接室に捕われまくりじゃねーか!?」



その前に兄貴に夢中な癖にっ!!!



「じゃあ、授業サボったらお仕置きだからね」


雲雀にだけは言われたくない。そう言ってやりたいが、言って無駄だから言わないでおこう。

後が面倒だ。



そう考えながら雲雀を見送ると、教室に向かおうと足を進める。

すると、突然後ろから何者かに抱き着かれた




「はよっ!獄寺ぁ!」

「っ〜〜〜離せ野球馬鹿!!!!」



この馴れ馴れしい奴は野球馬鹿……もとい、野球部のエースでクラスメートの山本武

入学当初から何故かしつこく付き纏われ、勝手に親友だと豪語するウザいやつ



でも、同年代で気がねなく接する事が出来るのは、雲雀を抜かせば山本だけだったりする

そんなこと、一生教えてやらねぇけど




「今日も可愛いのなー」

「うぜぇ!可愛いとか言うな!!」



訂正。やっぱりただのウザい奴だ。




「獄寺、現文の宿題やったか?昨日部活だったから疲れて寝ちまったのなー」

「俺が現文の宿題やってねぇわけないだろ。予習復習もバッチリだぜ!てめぇには見せねぇけどな」

「ひでぇ!!俺と獄寺の仲だろ!?」

「知るか!第一、自分でやらなきゃ身につかねぇだろ!?」

「獄寺君の言う通りだよ、山本」



突然の第三者の介入に驚き振り返ると、スーツを身に纏い、優しい笑顔をした青年が立っていた



「沢田先生!おはようございます!!!」



俺は山本を振り払い、深々と頭をさげながら挨拶をした



「ご、獄寺君!そんな直角に頭下げなくても…!」

「はよっす、ツナ。宿題見逃してくんね?」

「おまっ、沢田先生に失礼だろ!?」

「いいよ、獄寺君。山本も、今日中に提出してくれたら減点しないであげるから、少しは頑張ってよ」

「マジで!?サンキューツナ!助かったぜ!!!」




この人は俺達の担任の沢田綱吉さん。

生徒からツナとかダメツナとか呼ばれているが、俺が唯一尊敬する教師だ。



と言っても最初は頼りない教師だと思っていた。特に俺は、年上が嫌いだし。



俺は昔から、この髪の色や瞳の色で問題児扱いされていた(いや、実際に問題児なのだが)

問題児だから、という理由で馬鹿にされるのは御免だから、勉強だけは無駄に頑張った。 おかげで成績は常にトップをキープしている。


しかし、そんな俺に対して教師は必ずこう言うんだ。


『流石は、獄寺先生の弟なだけはある』っと…




俺は兄貴のこと尊敬してるし、兄貴に似てると言われるのは嫌いじゃない。

でも、比較されるのは大嫌いだった。


大人は俺と兄貴を比較する。だから、年上は嫌いだった。



でも、沢田先生だけは違った





『凄いよ獄寺君!今回のテスト、かなり難しめに作ったのに満点取られるなんて思わなかった!』

『………そりゃ、兄貴の弟ですから』

『え…』



兄貴はすげぇモテるから、俺に取り入って兄貴に近づこうとする奴はたくさんいた

だから、コイツもそうなんだと思った




『なに言ってるの?獄寺先生は関係ないでしょ?』

『え?』

『この結果は、獄寺君が頑張ったからでしょ!全部獄寺君の実力だよ』

『沢田……先生』

『次も頑張ってね』



そう言って沢田先生は微笑んだ

その日から、俺にとって沢田先生は特別になったんだ



これは後から知ったことだけど、兄貴と沢田先生は中学時代の同級生で仲が良く、家に遊びに来ていた沢田先生に俺は凄く懐いていたらしい




「あ、予鈴だ。二人とも早く教室行こう」

「ああ、…………って獄寺?どうしたんだ?」

「え?いや、なんでもね」




ただ、一つ不思議なことがある


俺は記憶力には自信があるのに、どうして沢田先生の事を忘れてしまっているのだろうか?




当時俺は4才。

4才の頃の俺は、一体何をしていたんだろうか…――?












思い出そうとしたら、何故か頭がチクリと痛んだ




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