ごくどきっ!

□エアメール
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「あ、獄寺先生。こんな所に居たんだ」

「沢田先生…!」



喫煙室でタバコを吸いながらテストの採点をしていると、同期で尚且つ中学時代の同級生である沢田さんが顔を出した


それに気づくと、俺は慌ててタバコの火を消した



「別にいいのに。獄寺君の煙りにはもう慣れたよ」

「ダメですよ、沢田さん。副流煙は有害物質が多いんですから!」



普段は職業柄、獄寺先生と呼ぶが、こうして二人っきりになると、昔のように獄寺君と呼んでくれる

俺はそれが無性に嬉しくて、俺も二人の時は沢田さんと呼ぶようにしていた




「あ、テストの採点中だった?」

「いえ、今終わった所なので…」

「そっか。あれ?珍しいね、獄寺君が満点じゃないなんて…」



今沢田さんが言った獄寺君というのは、隼人の事だろう

俺は偶然一番上にあった隼人の答案用紙を見て、くすりと笑った



「ああ、アイツに満点取らせないように問題作ったので」

「もう。仕事に公私混同挟まないでよね」

「すみません、つい。所で何か話があったんじゃないんですか?」



タバコを吸わない沢田さんが喫煙室に来ることはない

あったとしても、誰かに用事があった時だけだ。そう思って尋ねると、沢田さんの表情が少しだけ曇ったように見えた。




「実は、ね。話そうかどうしようか迷ったんだけど…」

「…?」

「昨日、家にエアメールが届いたんだ」

「っ!?」



その言葉に、俺は目を見開いた

沢田さんの家には、時々エアメールが届く



差出人は、いつも同じ。




「アイツからっすか?」

「……うん、」



予想通りの言葉に、俺は無意識に拳を握りしめた



「近いうちに、日本に来るかもって……そう書いてあったよ」

「っ……そう、ですか」

「獄寺君……まだ10年前のこと引きずってるの?」

「っ……」

「獄寺君に逢いたい、って書いてあったよ。ねぇ、逢ってあげようよ…」

「……沢田さん。返事はもう書かれたんですか?」

「え、まだだけど…」

「じゃあ、俺はまだ逢えないって、書いておいて下さい」

「獄寺君…」



沢田さんは少し呆れたようにため息をはいた



「わかった。獄寺君は逢えないって言ってるけど凄く逢いたそうな顔してたって返事しとく」

「さ、沢田さん!?」

「10年も友達やってるんだからね。俺に嘘は通用しないから」



そうニッコリ笑うと、沢田さんは喫煙室を出ていった

残された俺は、再びタバコへと手を伸ばした




「やっぱり、沢田さんには敵わねぇか…」

「何がですか?」

「へ?」



タバコに火を付けようとジッポーを探していると、火のついたジッポーを差し出されると同時に降ってきた声

視線を上げると、そこには六道骸の姿があった



「なっ…」



いつの間に、と思ったが、骸が神出鬼没なのはいつものことだ

俺が骸のジッポーでタバコに火を付けると、何故か骸は俺の隣に座りだした




「なんだよ…」

「別に。アイツとは誰のことかと思いまして?」

「っ!てめぇ……いつから聞いてやがった」

「さぁ?」



怪しく笑う骸に、俺は眉をひそめた



「てめぇには関係ねぇだろ」

「まぁ、関係ないですし、別に興味もありませんけどね」

「っ…!」



胸がズキリと痛んだ。

なにショック受けてんだよ、俺のばか…




「でも1つだけ。あまり隼人君を虐めないで下さいね」

「は…?」



なんで……ここで隼人が?



「っ!?最初から盗み聞きしてやがったな!!!つか、隼人には手出すなよ!!!」

「クフフ」

「な、なんだよ…」

「いえ。ようやく獄寺先生らしくなったなと…」

「え?」

「珍しく覇気がなかったようだったので。僕はこっちの獄寺先生の方が好きですよ」





そう言って喫煙室を出ていく骸を見送りながら、俺の手の力が抜ける。

すると、重力に従って持っていたタバコがズボンの上に落ちた。



「あちっ!」



慌ててタバコの火を消すと、タバコを落とした足よりも熱くなる顔に触れる




「っ…好きとか、簡単に言うんじゃねーよ、馬鹿野郎っ」



本当に好きなのは隼人の癖に

俺なんて、隼人の付属品としか見てねぇ癖にっ














――――好きだぜ、勇人






いつだったか、アイツに言われた言葉


もう二度と、恋に現を抜かしたりしないと決めた10年前のあの日




でも結局俺は、こうして恋に縛られるのか…――





Next...



***
雲雀さんの出番少なすぎですね;
今回ちょっとシリアスモードだったので次回は明るくシャマル先生の恋愛相談室でも開こうかと(笑)

拍手ありがとうございました(^^)




 
 

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