ごくどきっ!

□シャマル先生の恋愛相談室A
1ページ/1ページ






「なぁ、獄寺。今日は部活ミーティングだけで直ぐ終わんだ。一緒に帰らねぇ?」

「はぁ?なんで野球馬鹿なんか待ってなくなくちゃなんねぇんだよ?」

「いいじゃんたまにはー。久々に家の寿司食ってけよ!」

「う……寿司か、」




放課後になり、帰ろうと廊下に出た所で山本に捕まった。

一緒帰るのは面倒だが、寿司は捨て難い。最近食べてないし…。


でも山本んとこで飯食うなら兄貴に晩飯いらねぇって断らなきゃだし。
でも山本んとこ行くつーと兄貴に止められんだよな…。

なんであんな山本相手に警戒してんだろ?




そんな事を考えながら廊下を歩いていると、視界の端に写った銀と黒。

雲雀と、兄貴だった。




「ありがとな、恭弥。鍵助かったぜ」

「お礼を言われることでもないよ。外ならぬ勇人さんの頼みだからね。
でも、保健室でサボるのも程々にしなよ」

「ははっ、悪い悪い」



そう言いながら二人で笑い合っていた。

雲雀の奴、俺がサボると問答無用でトンファー振りまわすくせに、兄貴はいいんだ…。



やっぱり兄貴は特別で、俺はオマケでしかないのかよ…。





「山本」

「ん?」

「保健室で待ってっから早くしろよ」

「マジでか!?直ぐに迎えに行くな!!!」



満面の笑みを見せながら去っていく山本を見送ると、俺はため息をつきながら保健室に向かった。

今は兄貴の顔を見たくなかった…。













「邪魔するぜ」

「あ?なんだよ、今度は隼人かよ…。もう放課後だぜ?ガキは早く帰れ」

「ガキ扱いすんなっ!!!山本待ってんだよ!」

「野球坊主を?」



俺がベットに潜り込むと、シャマルはニヤニヤしたように視線を向ける。




「な、なんだよ気持ちわりぃな…」

「いや、随分と野球坊主と仲良くなったもんだなーってな」

「はぁ?別に仲良かねぇよ!?アイツが勝手に付き纏ってくるだけだ…!!!」

「でも、隼人の性格上、本気で嫌いな奴は相手にしねぇだろ?」

「そ、そんなこと…」

「俺は単純に嬉しいんだよ。勇人にはツナがいたが、お前には友達って呼べる存在がいなかったろ?」

「雲雀がいんだろーが」

「お前にとっては暴れん坊主は友達じゃねぇだろ?」

「友達じゃ、ない?」



友達じゃないならなんだ?

幼なじみ……は同じ意味だし、兄弟のように育ったけど、実際兄弟じゃねぇし。


確かに山本はうぜぇけど一緒に居るのは楽だし、嫌いじゃない。多分、友達って言える存在なんだと思う。



じゃあ、雲雀は?

いつの間にか側に居るのが当たり前で、これからも側に居たいと思える存在。


でも、時々側に居るのが辛くなる事がある。
雲雀が兄貴の話ばっかりしてると、胸が苦しくなる。




「なぁ、兄貴ってよく此処来んのか?」

「まぁ、今日も来てたし。アイツが中学生ん時もよくサボりに来てたぁ…」

「兄貴って、雲雀のことなんて言ってんだ?」

「は?」

「兄貴もさ、俺と同じであんま他人に心開かないじゃん?俺とか沢田先生とか、シャマル。あと雲雀だけだろ?
俺は弟だし、シャマルは父親がわり。沢田先生のことも純粋に尊敬してんだなーってのは分かるんだけど、雲雀はよくわからねぇんだ」



兄貴が雲雀を見る目は、他と違う。
弟みたいに、ってのもあるんだろうけど、多分それだけじゃないと思う。

時々切なそうな目で雲雀を見ていることに、俺は気づいている。



もしかして兄貴は、雲雀のこと…―――





「隼人が思ってるような感情は抱いてないと思うぜ?」

「っ…なんでそう言い切れるんだ!?」

「分かるからさ。勇人は誰より雲雀に感謝してる。それと同時に、嫉妬もしてる。だから他とは違く見えるんだろ」

「感謝…?それに嫉妬って…」

「それを知りたければ勇人から直接聞くんだな。まぁ、アイツは素直に話さないと思うが」



あれはいつだったか。
勇人がまだ学生としてこの並盛中学に通ってた頃。

いつものように悩みを抱えながらこの保健室に来た。





『なぁ、シャマル』

『あ?』

『最近、恭弥を見てて思うんだ。アイツはいつか………俺の1番大切なものを、掻っ攫っていくんだろーなって』



俺は忘れない。あの時の勇人の、切なそうな顔を。

そして、





『でも、恭弥になら譲ってやってもいいかな、』




その後の、アイツの微笑みも。


勇人は誰よりも、お前の幸せを願ってるんだぜ?






「なぁ、隼人。もし本当に勇人の雲雀への感情が恋愛感情だったらどうする?
お前は兄貴の幸せを願ってやれるか?」

「そ、れは…」




兄貴には、幸せになって貰いたい。

でもそれはつまり、雲雀が…兄貴のものになってしまうということで…。



それは…そんなのは、嫌だ。




「俺……俺は、」




ガラッ


「獄寺!お待たせ!」

「…山本」

「ん?どうしたんだ、早く帰ろうぜ!」

「あ、ああ…」



俺は慌て鞄を持って山本の方へ向かった。
すると、後ろにいたシャマルに呼び止められた。




「隼人」

「え?」

「その気持ち、忘れんなよ」

「っ……」




その言葉に、俺は息を飲んだ。




やっと見つけた俺の答え。

俺の、気持ち。





俺は雲雀のことが、好きだ。

例え兄貴にだって譲りたくはない…―――





Next...




***
6話が長い;;

ギャグっぽくしたかったのに結局シリアスに;
雲雀の出番は相変わらず少ない。骸は出番なし←


次回はほんのり山獄(というか山隼?)のターンです。


 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ