ごくどきっ!

□雲雀家長男、来る!
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雲雀風、25歳。雲雀家の長男である。

中学卒業と同時に中国へと留学し、大学を卒業してからも中国で拳法の師範をして生活している。


日本に帰国するのは年に1度か2度あるかないかくらいで、5歳の時から離れて暮らしていた雲雀にとっては、兄なんかいないようなものだと以前呟いていたのを覚えている。


その雲雀の兄、風が、俺達にニッコリと笑顔を振り撒いていた。




「…何しに来たの」

「何しにって…実家に帰るのに理由が必要ですか?」

「残念だけど、父さん達はしばらく帰って来ないよ」

「そうなのですか?それはタイミングが悪いですね…私も1週間くらいしかいられないので…。
でも、兄弟水入らずというのもたまにはいいですね、恭弥」

「気安く呼ぶな」



雲雀はあからさまに不機嫌そうな表情て風を睨みつけた。
そういえば、雲雀は風が嫌い……というか苦手だったな、なんて頭の中を過ぎる。




「全く…そのつんけんした性格は誰に似たんでしょうね、久々の再会だというのに」

「貴方でないことは確かだね」

「それにしても隼人、しばらく見ない間に大きくなりましたね」

「え?あぁ、まぁ…最後に会ったの1年以上前だし…成長期だからな」

「本当、思わず手を出したくなる可愛さです」

「へ?」



そう言いながら風が俺に手を伸ばすと、雲雀がその手を叩いて風を睨みつけた。




「隼人に触るな!」

「……おや、そういうことですか」



その雲雀の態度に、風はクスリと笑う。



「ようやくくっついたみたいですね。10年も待ちましたよ」

「え?」

「ちょっと、何の話?」

「二人の事ですよ。両想いになったのでしょう?」

「「なっ!?」」


予想外の風の言葉に、俺と雲雀は顔を真っ赤に染め上げた。


「全く…端から見てれば両想いだったのに、隼人は無自覚ですし、恭弥に至っては勇人が好きなのだと勘違いして…じれったいったらなかったんですよ?」

「嘘…だろ、」



俺ってそんなに分かりやすかったのか!?



「でも、隼人と恭弥が恋人になったのなら、これで私も本気になれるというものです」

「風が本気にって…」

「まさか、貴方…」

「もちろん勇人の事ですよ」




協力して下さいね?と笑う風を見ながら、骸の事が頭を過ぎった。

風の事は好きだし、風になら兄貴を任せられる……とは思う。


でも、俺は……兄貴には骸の方が似合うと思うんだよな…。



















「え?風が帰ってきたのか?」



翌日、学校に来て兄貴に会うなり風が帰ってきた事を伝えた。

結局昨日は、風も居たから雲雀と恋人らしい事は何も出来ずに終わったのが悔やまれる。
まぁ、風の作った炒飯が美味かったからいいけど…。




「へぇ、風先輩帰って来てるんだ。懐かしいなぁ」

「それで、今日俺ん家で餃子パーティーするから早く帰ってこいって。
よかったら沢田先生もどうですか?」

「え?いいの、俺までお邪魔しちゃって?」

「もちろんですよ!昨日、風と沢田先生の話をしたら会いたがってましたから」

「沢田さんも風に会うの久しぶりでしょう。是非来て下さい」

「本当?じゃあお邪魔しちゃおうかな?」



でも俺まで行って群れたりしたら、雲雀さんに咬み殺されそうだなぁっと、沢田先生は冗談混じりに笑った。



「あ、そうだ兄貴。もう一人誘いたい奴いるんだけど、いいか?」

「誘いたい奴?」

「ああ、風にはもう言ってあるから」

「なら構わないが、誰を誘うんだ?まさか山本?」

「へへ、内緒」




怪しい笑みを浮かべて、俺はその場を去った。

風には悪いけど、兄貴には幸せになって欲しいからな。




















「なんで……骸が?」

「隼人君に誘われたからですよ」



突然家に現れた骸に、勇人は呆然とし、弟へと顔を向ける。




「ほら、こないだ世話になったし、飯もご馳走になったからな。ダメだったか?」

「いや、ダメじゃ…ねぇけど」

「ダメに決まってるでしょ!?なんでよりにもよって六道なの!?山本武の方がまだマシだよ!!!」

「骸は雲雀が思ってるような嫌な奴じゃねぇよ…」

「隼人に付き纏ってる時点で十分嫌な奴だよ!?」



それ、単に兄貴の気を引きたかっただけだし。と言ってやりたいが、勇人のいる前でそんな事言える訳がない。そう思って隼人は口を閉ざした。




「嫌ですね、雲雀君。何度も言ってますが僕は可愛い生徒に手を出すほど落ちぶれちゃいません」

「隼人が卒業したら手を出す気?」

「………」

「否定しなよ」



笑顔でごまかす骸に、すかさず綱吉がツッコミを入れた。
唯一骸の本心を知っている隼人は、恭弥をからかって遊ぶ骸の姿にため息をもらした。






「どうしたんですか?皆で玄関に集まって……お客さん来たのでしょう?」



夕食の支度をしていた風が、リビングから顔を出した。
そして、骸の顔を見るなり大きく目を見開いた。





「貴方は…」

「お久しぶりです。雲雀君の兄というのは、やはり貴方の事だったのですね」

「は?お前ら知り合いだったのか?」

「えぇ、昔ちょっと…」




骸と風の間に、冷たい空気が流れた。




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