ごくどきっ!

□笑顔の攻防
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「へぇ、骸って黒曜中の生徒会長だったのか」



餃子の入った鉄板を囲みながら、俺は骸の昔話に耳を傾けた。

ちなみに群れを嫌う雲雀は、リビングの隣にある和室で瓜と二人で食事をしている。
後で機嫌とらないとマズイかな…。




「えぇ、その時の並中の生徒会長が彼で、よく近隣中学との交流会の時に顔を合わせていたんです。
雲雀君を初めて見た時は、彼によく似ていて驚いたんですよ。兄弟がいるようなそぶりがなかったので、他人の空似かとも思ったのですが…」

「私も六道さんの事はよく覚えていますよ。他の人達とは一風変わった雰囲気を醸し出していましたからね」

「それはお互い様でしょう、クフフ…」

「それもそうですね」



笑顔でそんな会話をする二人に、俺は何故か背筋を震わせた。

なんでだ?二人とも笑顔なのに、なんか怖い。

どうやら兄貴や沢田先生もそれを感じてるのか、顔を引き攣らせていた。





「あ、飲み物が無くなってしまいましたね…。勇人、買い物に付き合って下さいますか?
この辺、昔と変わってしまったので道がわからなくて…」

「え?ああ…」

「それなら僕が行きますよ。車できたので」

「仮にもお客様のお手を煩わす訳にはいかないでしょう?」

「そんな気にしないで下さい。なら、隼人君と一緒に行きますから」

「え!?ここで俺に振るのか!?」



骸は兄貴が好きなんだから兄貴を誘えばいいだろ!?



「ちょっと待て!隼人と二人っきりにするわけないだろ!!!俺が一緒に行く!」



ああ、兄貴が反対するの分かってて言ったのか。
骸って思ってた以上の策士だな…。




「そうですか?では、獄寺先生と一緒に…」

「僕と隼人が行ってくるよ」

「へ?」

「行くよ、隼人」



いつの間にかリビングにいた雲雀に腕を捕まれ、俺は玄関の方へと引っ張られた。




「ちょっ…雲雀!?」



沢田先生が助けを求めるような瞳を向けてくる。

すみません、沢田先生!こんなあからさまに空気の悪い所に貴方を1人残すなんて…!


ご武運をお祈りしてます!

















「恭弥の奴…しばらく帰ってこないつもりだな」

「そうでしょうね。恭弥の性格上、わざわざ群れに帰るわけないですから」

「骸もいるしな」

「あはは…」



綱吉は渇いた笑みを漏らした。

なんだろこの微妙な空気。早く帰りたい…。
というか、前から思ってたけど…骸ってもしかして…。





「ガキ達も居なくなったし、酒でも呑むか。あっと…骸は車なんだったな」

「僕はお茶で構いませんよ、遠慮しないで下さい」

「そうか?じゃあグラスを…」

「手伝いますよ、勇人」




そう言って勇人に笑みを見せる風に、骸は眉をひそめた。

思い出すのは10年前の、あの日の事…。
















――――――――――――――――――………10年前




「骸さん凄いれす!また全国模試1位ですよ!」

「まぁ、当然でしょう」



その頃の僕は、周りの人間が皆馬鹿に思えた。

勉強もスポーツも、張り合える人は誰もいない。つまらない人生だ。そう思っていた。


教師や寄って来る女に見せる笑顔は全部作り物。
本当の笑顔なんて、どこかに無くしてしまっていた。





「でも、骸様…。骸様と同一で一位の者がいますよ?」

「え…?」



馬鹿ばっかりだと思っていた。僕に張り合える人間なんかいないと…。

そこに現れたのが、彼だった。




「雲雀風。確か、拳法の大会で全国一位を取って新聞に載ってた人物です」

「雲雀……風、」



彼の存在を初めて知った時、悔しさよりも嬉しさが勝った。

どんな人物なのか、会ってみたいと思った。


そしてその機会は、直ぐに訪れたのだ。









(あれが、雲雀風…)



近隣中学との交流会に、彼は現れた。

彼を見た瞬間、僕は核心した。彼は僕と同じだと。


友好的な笑顔の下に隠れた、裏の顔。他人を馬鹿にしたような、そんな表情。
僕に似ているからこそ、僕はその上っ面の笑顔に気付けた。





「貴方が六道さんですか。嬉しいです、一度お会いしてみたかったんですよ」

「えぇ、僕もですよ」



彼ならば、僕のつまらない人生を変えてくれるかもしれない。
僕の一番の、理解者になりえるかも………そう、思った。


あの、笑顔を見るまでは。





♪〜



「あ、すみません。私の携帯です」



風は僕に断りを入れると、携帯を取り出した。

そしてディスプレイで電話の相手を見た瞬間……彼は微笑んだのだ。



先程まで見せていた上っ面の笑顔じゃない。

僕が無くしてしまった、本当の笑顔で――





「え?今日遅くなるんですか?
大丈夫ですよ。恭弥もいますし、僕も直ぐに帰るので隼人の事は任せて下さい。
えぇ、それでは」



短い会話を終えた風が、申し訳なさそうに僕に顔を向けた。



「すみません、六道さん。用が出来てしまったので先に失礼しますね」

「いえ………ご家族の方ですか?」

「いいえ、友人ですよ。大切な…ね」




悔しかった。

僕と彼は対等だと思っていたのに、僕の持っていない大切な者を……彼は持っている。

初めて感じた、敗北感。



それが、僕と風の出会いで……僕が勝手に彼をライバル視するようになるきっかけだった。
















(今思うと、あの時の電話の相手は獄寺先生だったんですね)




あれから10年……僕も大切な者を見付ける事が出来た。

あの時の敗北感はもう感じていない。



今なら貴方に、負ける気はしない。




Next...



*****
骸VS風編突入です!
やっと出せた風さん!そして何気に初書きだ風さん(笑)

ツナ様が結構空気ですみません;;
次回はちょっと目立つ予定です。

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