ごくどきっ！
□失踪
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「それが……獄寺先生の罪ですか？」
10年前の出来事を骸に話すと、重苦しい空気が流れた
「…最低だろ？自分のことで精一杯で、隼人のことを傷つけた…」
「確かに、そうかも知れません。でも僕は…それが罪だとは思いません」
「え？」
骸の言葉に、勇人は目を見開く
「親を失う悲しみというのは、僕にはわかりません。初めから親なんていませんでしたから」
「あ、」
「でも、大切な人を突然失ったらと思うと……正直、自分を保っていられる自信はありません。
きっと僕も、周りを気遣う余裕もなく、取り乱す事しか出来ないと思います。それが、本当に罪なのでしょうか？」
「っ…でも……俺は、」
「獄寺先生っ!!!!」
勇人の言葉を遮るように慌てた様子で扉を開けたのは、一人の男子生徒だった
「どうしたんだ？ノックもしないで…」
「今すぐ保健室にっ！獄寺と沢田先生がっ…!!!」
「っ!?」
顔を真っ青にしながらそう告げる生徒の様子に、勇人の背筋が凍った
そして、慌てて喫煙室を飛び出して行った
(隼人っ……沢田さん！)
怖い
また、あの時のように一度に大切な人を失うことが―――
「隼人っ!!!!」
勇人が保健室に飛び込むと、ベットの上で眠る隼人の姿と、ベットサイドに座る頭に包帯を巻いた沢田さんの姿
「獄寺君っ……どうしよう、俺…」
「沢田さん!?その怪我!?」
「俺のはたいしたことないんだ……でも、隼人君が、」
10年前のあの日から呼ぶことのなかった"隼人君"という呼び名に、嫌な予感が全身に過ぎる
俺に続いて骸や、騒ぎを聞き付けてきたらしいディーノも保健室に入り、それまで黙っていたシャマルの一言で空気が凍った
「記憶が、戻ったんだとよ」
「っ!?」
記憶が……戻った？
目の前で両親を失った悲しい記憶も
隼人をどん底へと突き落とした……あの、言葉さえも
「ツナが隼人を庇って棚の下敷きになったのがフラッシュバックになったらしい。
元々、ディーノとの再会で記憶が戻りかけてたみたいだしな」
「……それで……隼人は？」
「お父さんと…お母さんの名前を叫びながら、気を失っちゃった…」
「ツナのおかげで外傷はほとんどねぇから、そこは安心しろ」
「……そっか、」
記憶を取り戻した隼人が目を覚ましたら……どうなるんだろうか？
やっぱり俺の事……軽蔑するんだろうか？
「…俺の、せいだよな」
そう言うディーノの言葉に、ピクリと反応する
「俺のせいで、隼人の記憶が…」
「ディーノのせいじゃねぇ。何れは……向き合わなきゃいけない問題だったんだ」
「勇人、」
それが遅いか速いかの違い
いつまでも、逃げていいことじゃなかったんだ
「はぁ…とりあえずお前らそろそろ授業始まるだろ？隼人の事は俺がみてるから教室戻れ」
「でも……そういや、恭弥は？」
今の隼人には、恭弥が側に居ないと…
「運悪く隣町に行ってるみたいで…。一応草壁さんに事情話して連絡つけて貰ったから、多分こっちに向かってると思う」
「そう、ですか…」
こんな時、恭弥を頼ることしか出来ない自分が情けない
結局俺は…隼人の心の支えにはならないのか――――
「っ……ん、」
「目、覚めたのか？」
「シャマ、ル」
シャマルは目を覚ました隼人の頭を優しく撫でる
「気分はどうだ？」
「…父さんと、母さん………俺の、せいで」
「バーカ、隼人のせいじゃないだろ？もうすぐＨＲ終わらせた勇人が来るから、もう少し寝てろ」
「…兄貴が、」
その言葉に、隼人の表情が強張った
「なぁ、シャマル。喉渇いた」
「ん？水でいいか？」
「コーラ」
「お前なぁ、んなもん保健室にあるわけないだろ！…ったく、購買行って買って来るから。大人しくしてろよ」
「…さんきゅ」
シャマルが保健室を出て行ったのを確認すると、隼人はベットから起き上がった
「ごめん、シャマル」
「隼人ー。コーラ買ってきたぜー………っ……隼人？」
シャマルが購買から戻ってくると、保健室はもぬけの殻となっていた
そして、虚しくＨＲ終了のチャイムだけが鳴り響いた―――
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