小ネタ

□卒業〜さよならを君に〜(雲獄)
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「お前、卒業式でなくていいのかよ?」



寒さが残る3月下旬

並盛中学の卒業式が行われた。



それはつまり、アイツがこの並盛中学から居なくなる事を意味していた…――






卒業〜さよならを君に〜









「僕があんな群れてる行事に出ると思う?」

「思わねぇ」

「そういう隼人こそ、在校生も全員参加のはずなんだけど」

「3年になんざ喧嘩売られた思い出しかねぇよ」

「へぇ、ならなんでわざわざ学校来たのさ?沢田の護衛なら卒業式にも側に居なきゃ意味ないでしょ?」

「っ……」



隼人が少し頬を赤く染めた。
僕も意地が悪い。隼人は僕に逢いに来たのだと分かっていてこんなことを言うのだから。




「僕が卒業したら寂しい?」

「…んなことねぇ、清々するぜ」

「全然そんな顔してないけど?」

「……」



隼人は無言になって俯く。
まさかここまで落ち込まれるとも思っておらず、僕は目を見開いた。




「隼人…。別に僕が並盛を離れるわけじゃないんだから、そんなに落ち込まないでよ」

「っ……そう、だよな。雲雀は並盛を離れたり、しないもんな…」




すると隼人が顔を上げ、真っ直ぐな瞳で僕を見た。

いつもと違う隼人の様子に、僕の胸が何故かざわついた。




「はや…」

「雲雀、俺な…。








イタリアに帰ることになった」





その言葉に、僕は言葉を失った。

隼人がイタリアに帰る?

並盛から……居なくなる?




「どうして?」

「中学卒業したら、10代目が正式にボスに就任する事が決まったんだ。だから俺が先に本部に戻って、その準備をしなきゃなんねぇ」

「っ……そんなの!君じゃなくてもいいだろ!!!」

「俺以外誰がいんだよ!?」

「っ……」

「山本や芝生、髑髏はまだイタリア語話せねぇし。ランボはまだガキだ。
マフィアを恨んでる骸に任すわけにもいかねぇ。お前だって………並盛を離れたりしないだろっ」



隼人の瞳が涙で潤んでいる。

なのに僕は、かける言葉を見つけることも出来ない。




「いつ、行くの?」

「4月1日の、朝一で…。準備があっから、雲雀と逢うのは多分今日が最後だ」

「っ……」

「10代目達には、見送りに来ないように頼んである。だから…」




そこまで言って、隼人は言葉を止めた。

そのあと何でもないと言って、立ち上がった。





「じゃあ俺、教室戻るわ」

「隼人…、」

「じゃあな……雲雀」




隼人が応接室を出ていく。


ここで初めて隼人と出逢った。

君に告白したのも、初めて口づけを交わしたのも、ここだった。



ここで今僕は、隼人に別れを告げられたのだ。

"じゃあな"なんて軽い言葉だったけど、隼人なりに精一杯の別れの言葉だった…―――




















*4月1日*



「まさか、見送りに来るなんて思わなかったぜ」

「何を今更。僕に見送りに来て欲しいから沢田達の見送り断ったくせに」

「ははっ、バレバレだったな。でも、来てくれてさんきゅ」



隼人ははにかむように笑った。

僕だけの為にある隼人の笑顔に、胸が苦しくなった。




「ねぇ、隼人。あれから色々考えたんだ」

「え…」

「僕は並盛を離れるつもりはないよ」

「っ……」

「イタリアには行かない。マフィアにもならない。ボンゴレなんか……知らない」



隼人は泣きそうな顔をしながら唇を強く噛んだ。

そんな顔しないで。

僕は君の笑顔が見たいんだから。




「だから、さよならをしに来た」

「っ……そっか。じゃあ本当に雲雀と逢うのもこれが最後だな」

「クスッ、ねぇ隼人。今日が何の日か知ってる」

「は?えっと4月1日だろ?それがどうか…――――っ!?」



隼人は驚いたように目を見開き、僕を見つめた。
その様子に僕はクスリと笑みを浮かべた。




「ま、さか………エイプリルフール、だなんて言わないよな?」

「正解だよ」



僕は隼人を引き寄せると、力強く抱きしめた。

ああ、やっぱり。僕にはこの温もりを手放すことなんて出来ない。




「さよならをしにきたのは隼人にじゃない。並盛にだ
僕は隼人と共に行くよ」

「っ……それも、嘘か?」



不安そうな顔をする隼人に、あらかじめ用意していたイタリア行きの航空チケットを見せると、隼人は嬉しそうに微笑んだ。


僕が見たかった、隼人の笑顔だ。





「後悔してもしらねぇからな」

「しないよ」

「並盛に帰りたいなんて喚いても、ぜってー帰してやらないからなっ」

「君こそ、10代目に会いたいって喚いても会わせに行かせてあげないからね?」



そう言って互いに顔を合わせて笑いあった。




「つーか雲雀手ぶらじゃねぇか。それでイタリア行くのかよ…」

「隼人が居ればそれでいい。他には何もいらないよ」




全部並盛に置いていく。

新たな人生を、君と生きる為に…―――








*****
アトガキ

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えぇい!エイプリルフールと一緒にしちゃえ!と出来た話です(爆)

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