小ネタ

□瓜はサンタクロース(瓜獄)
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サンタクロースなんていない



それを知ったのはまだガキん時



だって、朝起きて枕元に置いてあったプレゼントは、俺の本当に欲しい物ではなかったから…








【瓜はサンタクロース】











「お邪魔しました!10代目!!!」

「気をつけて帰ってね、獄寺君。それに瓜も」

「はい!ありがとうございます」

「にょおん!」





今年のクリスマスも10代目のお家にお邪魔した




10代目の家で過ごす時間は凄く心地よかった


10代目がいて

ちょっと騒がしいがガキ達もいて…



そしてなにより、こんな俺を温かく向かえ入れてくれるお母様がいる




だからこそ、誰もいない冷たい自分の家に帰るのが嫌いだった


厚かましいのは重々承知だか、ずっとあの空間にいたいと願っててしまっている自分がいた



一人の淋しさを知ってしまったから…――





「にょおん?」

「瓜?……そっか…今年からは一人じゃねーんだよな。瓜がいるもんな」

「にょ!」



そう、今年は一人じゃない

瓜がいる


それは凄く幸せだ


でも…――





「瓜、俺さ、ずっと欲しかったもんがあるんだ」

「にょ?」



ガキの頃に貰ったサンタクロース……いや、父親からのプレゼントは、凄く高価な物だった


でも、そんな物はいらない


欲しかった物はただ一つ





「俺は母さんに『おかえり』って言って欲しかったんだ」




そんなの、今はもう無理な願いなのはわかってる


それでも10代目のお母様が10代目に『お帰りなさい』と言うのを聞く度に

胸が苦しくなった




俺は一度も、母さんに『お帰りなさい』なんて言われた事がなかったから





「って、ないものねだりだよな!今は瓜がいるから他に欲しいもんなんてねーよ!」

「にょ…」

「んな顔すんなって。寒いし早く帰ろうぜ」




そう言って駆け足で家に帰ると、何故か玄関の扉が空いていた



「俺、閉め忘れたっけ?」



疑問に思いながらゆっくり扉を開けると、肩にいた瓜がそのドアの隙間から家の中に入っていった




「瓜?どうしたんだいきなり…」

「にょおん!」



瓜は俺より先に玄関に入ると、振り返って俺を迎え入れた


その様子はまるで……




「お前…まさか、『おかえり』って言ってるのか?」

「にょ!」




胸の奥が、熱くなった




「う、うり〜」

「ふにゃ!?」



俺はおもいっきり瓜を抱きしめた

苦しいと訴えていることに気付いていたが、力を緩める事なんて出来なかった



ずっと、ずっと欲しかったモノ


ようやく俺は手に入れた






「ただいま、瓜」

「にょおん…」







サンタクロースなんて信じてなかった


でも、俺のサンタクロースはすぐ側にいたんだな





















「にしても、なんで玄関の扉が開いてたんだ?」



疑問に思いながらリビングに向かうと、部屋の明かりが付いていた

暖房も付いていて、いつも冷たいはずの部屋が暖かい



「泥棒?」

「にょ?」



にしては荒らされていないし、第一ここに金めの物なんてない


なら一体誰が…?







「お帰りなさい、隼人」

「え…?」



背後から聞こえてきた声に振り返ると、そこにいた髪の長い女のシルエット




母……さん?









「って、姉貴!?」



一瞬なんで母さんに見えたのか…

よく見るとそこにいたのはビアンキだった



ゴーグルを付けていたので倒れずにすんだのが唯一の救いだ




「なんで姉貴が此処に!?つーかどうやって入ったんだよ!!!」

「合い鍵使ったに決まってるでしょ?」


だからいつの間にそんなの作りやがった



「たまには姉弟水入らずでクリスマスを過ごそうと思ってね」

「…姉貴……」

「隼人の為にケーキも焼いたのよ。隼人も瓜も遠慮しないで食べなさい」



なんだこれ


嫌がらせか?嫌がらせなんだな?



俺の感動を返せ





「瓜…」

「にょおん…」

「こうなったら…」

「にょ…」



選択肢はただ一つ




「逃げるぞ!!!」

「にょおん!!!」

「待ちなさい!隼人!!瓜!!」




待ったら100%殺される


でも……







――お帰りなさい、隼人







どうやら今年、俺のサンタクロースは2人いたらしい……




End

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