小ネタ

□女神に感謝を…(瓜獄)
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明日は9月9日で、ご主人の誕生日だったりする

でも、だからといって何もする気は僕にはない





「こら、瓜に小三郎、人の頭の上でにゃあにゃあピィピィ騒ぐな」

「小次郎なのな…」




今日もいつもと変わらない

ご主人と10代目と山本武の三人で学校へ向かっていた




「あ、そうだ獄寺君。明日は家においでよ」

「明日……っすか?」

「獄寺君、誕生日でしょ?母さんにご馳走作って貰うから」

「お!いいなー。俺も親父に寿司握って貰うな」

「っ………」



10代目達の言葉に、ご主人は何故か顔色を変えた

いつもなら「恐縮です!!!」とか頭を下げるのに…




「すみません、10代目…明日は…」

「え、用事あるの?まさか恋人…?」

「まさか!そういうんじゃないんですけど…。実は今日、学校が終わったらイタリアに行こうと…」

「イタリアって、ダイナマイトの仕入れ?」

「……いえ、母の…墓参りです」



ご主人の言葉に、10代目も山本も言葉を失った

もちろん、僕も



「俺、今まで母の墓の場所…知らなかったんです。というか、ないと思ってました」

「なら、どうして」

「姉貴が親父に聞き出してくれたみたいなんです。だから、明日行ってみようかと…」

「1人で行くのか?なんなら俺達も…」

「んな気使うな。それにシャマルも一緒だから大丈夫だ」

「え!?シャマルが!?」

「本当は姉貴が来るってきかなかったんですが、流石に墓参りどころじゃなくなるし…」

「た、確かに;;じゃあ、明日は獄寺君…日本にいないんだね」

「一応、夜には帰ってくるつもりですが…」

「本当!?だったら遅くなってもいいから俺ん家寄って!」

「え、ですが…」

「ちゃんと当日にお祝いしたいじゃん。ケーキ用意して待ってるから!」

「は、はい」

「約束だよ!」




10代目の言葉に、ご主人ははにかむように笑った



そしてその日の夕方

ご主人は僕を連れてイタリアへと渡った















飛行機では匣の中にいた為、僕が外に出たのはイタリアのホテルだった




「本当にホテルでよかったのか?墓の場所なら実家の方が近いぜ」

「誰があんなとこ帰るかっ!!!」

「まぁ、気持ちはわからんでもないが、何かあったら呼べよ。隣の部屋に居るからな」

「いつまでもガキ扱いすんな!」

「へいへい」



そう言ってシャマルが出ていくと、ご主人は小さくため息をはいた

なんというか…元気がない


時々、ダイナマイトの仕入れでイタリアに来るが、いつもこうだ

日本にいるときと雰囲気が違う



いや、もしかしたらこっちが本当のご主人なのかもしれない




「にょおん?」

「ん?どうした、瓜。お前から寄って来るなんて珍しいな」



だって、ご主人がいつもと違うと調子が狂うから…



「瓜?」

「にょ」



僕はご主人の膝の上に乗って丸くなる

珍しい僕の行動にご主人は一瞬戸惑うと、優しく僕の背中を撫でた



その表情は柔らかくて、いつものご主人だった


やっぱり僕は、こっちのご主人の方が好き




あ、言っとくけどこっちの方がマシってだけだからな!?






「さんきゅ、瓜」



何に対してのお礼なのかは僕にはよくわからないけど、まぁいいや


その日、僕達は寄り添いながら眠り、一夜を過ごした













***



「お袋さんの墓があるのは、ここの1番奥だ」



翌日、9月9日

シャマルに連れられて来た小さな森のような所


なんでも此処は、親父の土地らしい




「一緒に行くか?」

「いいって、瓜もいるし一人で大丈夫だ」

「なら、向こうにあった喫茶店にいっから、ゆっくりお袋さんに逢ってこいよ」

「ああ、悪いな」




シャマルが去って行くのを見送ると、俺は森の奥へ足を進めた

小さな小道の脇には、いくつか墓石が立てられている

恐らく、先祖代々の墓場なのだろう



しかし、次第に小道は姿を消し、ただの林へと姿を変えていった




「っち、こんなとこに墓作りやがったのか」




悪態をつきながらも先へ進むと、ようやく林を抜けた。そこには今まで見た立派な墓石とは違う、小さな墓石が立てられていた


石にはイタリア語で母の名前が掘られていた

間違いなく、此処が母さんの……墓




「こんなっ、ところに…」



俺は唇を噛み、墓石に伸ばす手が震えた

こんな何もない、他の墓とも隔離された小さな墓



「こんな、所で…ずっと、一人で」



母さんは、居たのか?



墓石は綺麗に磨かれ、花も供えてはあったが、恐らくこれは姉貴が前もって訪れて綺麗にしてくれたのだろう

親父は愚か、誰にも墓参りなんてしてもらっていなかったのは間違いない




「にょ、にょおん!」




すると、それまで黙っていた瓜が声をあげる



「瓜…?」

「にょおん!!!」



前足が前方を指し、まるで前を見ろとでも言うような仕種に、それまで墓石しか目に入っていなかった俺は、前方に目を向けた


そして、そこに広がる光景に、俺は目を見開いた








そこに広がる景色は、まさしく絶景と呼ぶに相応しかった

そして、その景色の中心にそびえ立つ大きな城


あれは、俺が子供の頃に過ごしていた場所だった




「ま、さか…」




母さんは死んでも尚、此処から俺を見守ってくれていたのか?

親父も、だから此処に母さんの墓を立てたのか?



だと、したら…




「俺が……母さんを一人ぼっちに、した…?」




俺が城を飛び出したから、母さんは此処でずっと一人で…――




「ご、ごめ……母、さんっ」




一人ぼっちにしてごめん


こんなに近くに居てくれてたのに、気付かないで……ごめんっ





「…にょおん?」

「瓜?」



突然瓜が俺の頬に流れる涙をぺろりと舐めた



もし、あの時城を飛び出さなかったら…

ボンゴレに拾われることも、10代目達と出会うことも……こうして瓜と過ごすこともなかったのだろう…




「…ごめん、母さん」




俺、あの時の自分の選択を誤ったとは思わない

後悔なんかしてない



今までずっと、一人で寂しい想いさせちまったかもしんねぇ

でも、これからは時々こうして逢いにくるから



だから、許してな


俺の居場所は、もう此処じゃないんだ





「母さん、俺を産んでくれてありがとう」














墓の前ですっきりしたようなご主人の顔を見て、僕はホッと息をはいた



ご主人を虐めていいのは僕だけだから、ご主人を泣かせる奴は例え母親だろうと許せなかった



でも…




「母さん、俺を産んでくれてありがとう」




その言葉を聞いたら、怒りなんかふっとんだ


この人がいたから、今ここにご主人がいる

まだまだ半人前のダメダメご主人だけど



僕はそんなご主人が嫌いじゃないから

だから、僕も




ご主人様と出会わせてくれて、ありがとう…―――



















「シャマル!日本に帰るぞ!!」

「はぁ?ちょっとくらい観光してこーぜ、久々だろ?」

「観光したいなら一人で行ってこい。俺達は帰る。10代目達が待ってんだ、な、瓜!」

「にょおん!」




帰ろう、僕達の居場所へ…―――





End...

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