小ネタ

□そこに愛はあるから(綱獄・獄ハル)
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※ハル→ツナ→獄前提の獄ハルです。
※ツナ獄的には悲恋です。
※ツナがちょっと酷い男です。


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「ツナさんが好きです」



ハルの気持ちはもちろん知っていた。
いつも俺の妻になるとか軽い口調で言っていたから、俺も軽く流していた。

ハルの気持ちが軽いものじゃないことくらい、気付いていたのに。





「ごめん、俺……京子ちゃんが好きなんだ」




……嘘だった。

確かに、京子ちゃんの事は好きだった。俺の初恋だった。

でも今は、俺の気持ちが向いているのは京子ちゃんではなくて………獄寺君で…。


そんな事、ハルに言える訳もなくて、だからと言って好きな人なんか居ないと言えば、ハルはいつまでも俺を想い続ける事になるのは目に見えていたから。

だから嘘をついたんだ。

相手が京子ちゃんなら、ハルはきっと諦めてくれる……そう思ったから。



俺は、ハルの想いから逃げたんだ。








-そこに愛はあるから-












「え…?獄寺君、今なんて?」

「えっと…その、ですから……ハルと付き合う事になりました」



ハルに告白をされた数ヶ月後、俺は獄寺君から衝撃の告白を受けた。

ハルには早く新しい恋をして欲しいと思っていたが、まさかこんな展開になるなんて予想外だ。
だって…ハルと獄寺君はどっちかというと仲が悪くて……第一、ちゃんと言葉で聞いた事はなかったが、獄寺君も俺の事を好きなのかもと思っていた。


それはただの、俺の自惚れでしかなかった。




「へ、へぇ…いつから?」

「一週間前から…すみません、ハルが昔好きだったのが10代目だった手前、言いだしづらくて…」

「そ、そんなこと気にしないでよ!よかったね、おめでとう!」

「…ありがとうございます、」



無理矢理笑顔を作って自分を偽ったが、内心穏やかではなかった。

これは俺に与えられた罰なのかもしれない。
あの時、俺がちゃんとハルに獄寺君が好きだと伝えていたら、きっとこんな事にはならなかった。

ハルの為、とか言いながら結局は自分がハルから逃げたくてついた嘘。

だから罰が当たったのだ。




「あ、すみません!この後ハルと約束してるんです!では、また明日」

「うん、また…」




それからは、何よりも俺優先だった獄寺君が、ハルとの時間を大切にするようになった。
学校の送り迎えは必ずしてくれたけど、俺を送った後は直ぐにハルの元に向かう。

休みの日も、今までのように俺の家に来る事が減った。
彼女が出来たんだから当然だろ?と山本は言うけど、俺から獄寺君を奪ったハルが憎くて堪らなかった。

図々しい感情だとは、分かっていたけど…






返してよ。

獄寺君は俺の右腕で……俺の一番大切な人なんだ―――















「「あ」」



それから数日後の事だった。
母さんから頼まれた買物に向かう途中に、偶然ハル会ったのは。


告白をされたあの日から避けられていたせいか、久々の再会だった。





「お、お久しぶりです…ツナさん」

「久し、ぶり」

「………」

「………」



沈黙が流れる。

ハルと一緒にいてこんなに空気が重くなるなんて、ちょっと前までは考えられなかったのに。





「あ…っと、獄寺君から聞いたよ。付き合い始めたんだってね」



必死に話題を探したが、出てくるのはやはり獄寺君の事で…。
俺の言葉に、ハルも真剣な表情を俺に向けた。




「その事で……話があるんですけど、時間…大丈夫ですか?」















てっきり惚気られる事を覚悟していたにも関わらず、ハルらしくない真剣な表情につられ、俺は人通りの少ない河川敷でハルの隣に腰を下ろした。




「話って…?」

「ハル……ずっと気付いてました」

「え…」

「ツナさんに告白する前から、ツナさんが好きなのは獄寺さんだって……気付いてました」

「っ!?」



思いも寄らなかった言葉に、俺は目を見開いた。



「だから玉砕覚悟で告白したんです。ちゃんと、獄寺さんが好きだってツナさんの口から聞けたら、諦められると思って………なのに、」



俺は嘘をついた。

ハルが俺の嘘に始めから気付いていたとも知らずに。




「フラれた事より、嘘をつかれた事の方がずっとショックで…。ツナさんにとってハルは、簡単に嘘を言えちゃうような存在だったんだって…」



俺は、失恋よりも辛い想いを……ハルにさせてしまったのか?


最低だ。




「ご、ごめん…ハル、俺…」

「だから、ツナさんから獄寺さんを奪ってやろうと考えました」

「っ!?ハル!そんな事の為に獄寺君を…!」



言いかけて、ハルの瞳に涙が貯まっていることに気づき、俺はハッとする。




「酷いですツナさん!ハルが本当にそんな事するデビルレディーだと思ってるんですか!?」

「ご、ごめん……ついカッとなって」



ハルは絶対にそんな事はしない。
そんなの、今まで側にいた俺には分かる事だ。





「獄寺さんは、ツナさんにフラれたハルの側に居てくれたんです。ぶっきらぼうな態度は相変わらずですけど、獄寺さんが本当は優しい人なんだってちゃんと伝わって……今は本気で、獄寺さんが好きです」

「…そう」

「でも、獄寺さんのハルへの想いは同情です」

「え?」

「聞いてたんですよ、獄寺さん。ハルがツナさんに告白するところ。
ツナさんが……京子ちゃんを好きだと言った……あの言葉を…聞いてしまったんです」



その瞬間、血の気が引いたような気分だった。


もしかして………そんな、まさか―――






「獄寺さんはツナさんが好きなんです。多分、今でも…。
だから、同じように失恋したハルに…同情しただけなんですよ」

「そ、んな…」




俺があの時、嘘なんかつかなかったら…。

ハルを傷つけることも、獄寺君を失うことも…なかった?




「正直ハルは、ハルの乙女心を弄んだツナさんが許せません。獄寺さんを譲るつもりも、ありません…でも、」



いつの間にか、ハルの瞳から涙は消えていた。



「それでもツナさんが獄寺さんを好きだと言うのなら、告白して下さい。
またハルが、フラれるだけです」



その瞳は俺なんかよりずっと強くて、純粋で…。


俺には少し、眩しすぎた。






「狡いな、ハル…」



そんな事を言われて、俺
がハルから獄寺君を奪える訳がないって分かってる癖に…。




「一番狡いのは、ツナさんですよ」

「それも、そうだね…」




獄寺君に告白も出来なかった時点で、俺は完璧にハルに負けていたんだ。

もうこの恋が、前に進む事はない。




俺の恋は……終わりを告げた。












「10代目?それにハルまで………なにしてるんすか?」

「ご、獄寺さん!」

「なに慌ててんだよ、怪しいな…」

「はひ!怪しくないですよ!!!……というかもしかして、ヤキモチ妬いて下さいました?」

「なっ!んな訳ねぇだろ!?」




そう言って真っ赤になる獄寺君を見ながら、俺はクスッと笑みを漏らした。



ハル。君は一つだけ勘違いしてるよ。

獄寺君は同情だけでハルと付き合ったりしない。
確かに最初は同情だったのかもしれないし、獄寺君が好きなのは俺だったのかもしれない。



でも、大丈夫だよ。



ちゃんとそこには、愛はあるから―――




End...




****
やってしまった;;

本当はこの話、連載で考えていて、この話はそのプロローグ的な部分にと考えてたお話です。
最終的には10年後くらいまで続いてツナ獄ハッピーエンドにしたいなぁとか考えてました。

が、今の私にツナ獄の長編を書く余裕がないなと判断してこの部分だけで更新←
悲恋な上にただの獄ハルじゃんって感じですね。

すみません、和姫はツナ獄も獄ハルも大好きですw

あまり需要のなさそうな話を最後までありがとうございました!!!

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