小ネタ
□アレクサンダー大王より愛を込めて(骸獄)
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※獄誕小話です。
※恋人未満な骸獄(というか骸→獄)
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9月9日、深夜零時を過ぎた頃
その男は何の前触れもなく現れた
「こんばんは。獄寺隼人」
「お前……今何時だと思ってやがるっ」
心地好い眠りを妨げられ、不機嫌そうに顔を歪めた俺に、骸はさして気にした様子もなく小さな箱を差し出した。
「……なんだよ、これ」
「何って……ケーキですけど?」
「いや、そうじゃなくて。何でてめぇがこんな真夜中にケーキなんか持ってくるんだって聞いてんだよ!?」
「何故と聞かれても……今日は貴方の誕生日でしょう?」
「は…?」
確かに今日は俺の誕生日だ。
日付が変わったと同時に10代目と山本からメールがきたからちゃんと覚えてる。
だからといって骸が俺の誕生日を祝う理由はないだろう?
特別親しいわけじゃない。というか、俺にとって骸は10代目に刃向かう敵だ。
骸にとっても、俺は大嫌いなマフィアでしかないはず…。
「毒でも入ってんのか?」
「失礼ですね。人の真心を踏みにじるつもりですか?」
「真心って…」
犯罪者の癖になにを言い出すんだ。
「とにかく食べて下さい。貴方の為に作ったんですから」
「しかも手作り!?」
ますます怪しい……とは思うが、俺がこれを受け取らなきゃ帰りそうもない骸の雰囲気に、仕方なくケーキの箱を受け取る。
どんなケーキでも姉貴のポイズンよりマシだ。そう思いながらケーキ箱を開けると、そこにあったケーキ……それは…。
「モンブラン?」
何故モンブラン?
普通ショートケーキとかじゃね?
「モンブラン、嫌いですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど…」
「では食べて下さい」
「今すぐか!?こんな時間に!?」
「今食べなきゃ僕が帰った後に捨てる気でしょう?」
「うっ…」
図星を言われて言葉に詰まる。
ここまできたら後には引けないと、仕方なく台所に向かい、骸の分まで紅茶を注いだ。
「ほら」
「ありがとうございます」
俺から紅茶を受けとった骸は、何の疑いもなくそれを口にした。
俺が毒をいれてるかも、とは思わないんだな…。
そうなると、このモンブランに毒は入ってない。そう思えた。
「じゃあ、遠慮なくいただきます…」
とりあえずモンブランの頂点にある栗を口に運ぶ。
甘いだけかと思っていたその栗から、仄かなブランデーの味に、俺は思わず手を止めた。
「これ……マロングラッセか?」
「はい。大人の味でしょう?」
「マロングラッセって……お前もしかしてさ、」
「はい、なんでしょう?」
ニッコリと笑顔を向ける骸に、俺はスッと顔を背けた。
「な、なんでもねぇ!!!」
恐らく赤くなっているであろう顔を隠す為に、獄寺はモンブランに食らいついた。
その様子を眺めていた骸は、クフフと笑みを零す。
マロングラッセ
昔、かの英雄、アレクサンダー大王が最愛の妻、ロクサーネ妃に贈ったと言われる銘菓。
それから、常に最愛の人に愛を誓う贈り物とされている。
(もちろん、わかってて贈ってるんですけどね)
毒なんて入れてません。
でも、僕の心と言う名の惚れ薬は……入ってるかもしれませんよ?
End...
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私の書く骸さんは遠回りな告白が多い気がする…。
遠回りな告白で攻めまくって、最終的にはドストレートなくさい台詞で獄寺君をオトすんだと思います(笑)
菓子屋で働いてるのでお菓子の知識は多少あるんです。
だけどアレクサンダー大王が何者なのかは分かりません←(苦手な科目は世界史w)