小ネタ
□たぶん、それが始まり。(雲獄/本誌ネタバレ)
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※かなり本誌ネタバレ。
※恋人未満というか、恋愛未満な雲獄です。
※雲雀さんの某発言がショックすぎた件(;つД`)
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彼に対する印象は、悪く言えばチンピラ。良く言っても草食動物。それだけだった。
彼に興味なんかなくて、強いて言うなら彼の周りにいる沢田綱吉や山本武の方が僕にとっての興味の対象だった。
だから赤ん坊の誘いを断ってまで、風とかいう赤ん坊の味方に付いたのだ。
跳ね馬含め、彼らのチームには咬み殺したい奴らがたくさんいるのだから。
そう、理由はそれだけの筈だった。
「逃げられてしまいましたね」
「………」
逃げられた。この僕が、山本武だけなら未だしも、あんなチンピラにまで。
なんだこのイラつきと同時に感じる、違和感は?
「逃げるなんて男らしくないぞタコ頭も山本も!!」
「逃げずに真っ先に突っかかって来て、あっさりウォッチ壊された人の台詞じゃないよね」
「うぐぅ……。それにしても山本はともかく、タコ頭はらしくないぞ!」
「らしく、ない?」
笹川了平の言葉に、僕は眉を潜める。
「ちょっと前なら雲雀の挑発に俺より先に突っかかっていたと言うのに!」
「っ………」
そうか…。違和感の正体は、これだったのか。
確かに、喧嘩っ早い彼は幾度となく僕に突っかかって来た。
どうせ勝てないのだから、いい加減にすればいいのにと何時も思っていたのだ。
なのに、今回の彼は僕の挑発に乗るどころか、笹川を宥めていた。守護者同士の争いを沢田は望まないとか、そんな下らない理由で…。
「人は誰しも成長するものです」
木の上からヒラリと降り、そう告げる赤ん坊に目を向ける。
「私は彼の事をよく知りませんが、沢田さんやリボーン達との出逢い、数々の死線を乗り越え成長したのでしょう。流石はボンゴレ10代目の右腕を目指すだけの事はあります。先程の判断、コンビネーションは素晴らしかったです」
「敵を誉めてる場合なの?」
「事実ですから。逃げられた時点で、今回は貴方の敗けですね」
「………」
確かに…。ウォッチを1つ壊したとは言え、これでは負けたも同然だ。
だから、なのか?この妙にイライラする感覚は?
「雲雀?どこに行くんだ?」
「もう殆んど時間残ってないでしょ。応接室に戻る」
そう言って校舎に戻ると、その数メートル後ろを赤ん坊が付いてくる。
「なに?今日の戦闘はもう終わったんでしょ。必要以上に僕に関わらないでくれる?」
「……何をそんなに苛ついてるのですか?いえ、苛ついてると言うより、困惑してるという感じですが」
「っ!?」
「獄寺隼人の成長が、どうして貴方をそこまで動揺させるのですか?」
その言葉に、僕はグッと拳を握り締めた。
「あんなチンピラ関係ないっ!逃げるしか脳のない、ただの弱い草食動物じゃないか!」
「そうではないでしょう。弱い草食動物であって、欲しいのでしょう?」
「なっ…」
「彼に強くなって欲しくない。自分の興味の対象に、なって欲しくない。そう思ってるのではないですか?」
「な、にを…」
風の真っ直ぐな瞳に見つめられ、雲雀は金縛りにあったかのように動きを止めた。
「確かに彼はまだ弱い。腕っぷしだけというのなら、貴方の足元にも及ばないでしょうね。
ですが、人の強さとは…決して腕っぷしだけではない。沢田さんにも、山本さんにも、そして…貴方でも持っていない強さを彼は持っています。貴方は無意識にそれに気づいていた……でも、それを認めたくなかった。そうでしょう?」
「……僕にない、強さ?」
「答えはもう、貴方の中にあるはずです」
僕の中にあるなんて、そんなわけない。
だって、あんなチンピラに興味ないし、腕っぷし以外の強さなんて僕は求めていない。
「貴方はずっと一人で生きてきたんですね」
「当たり前でしょう?群れをなして生きるなんて、これから先も一生ないよ」
「そうですね。貴方なら一人で生きていけます。ですが、それでは本当の強さが何か気付けないままでしょうね」
「本当の、強さ…?」
「この町以外にも守りたいと願うものが出来れば、貴方はさらに強くなります。人生の先輩としてのアドバイスです」
そう言ってニコリと微笑み、風は窓の外へと姿を消した。
「赤ん坊の癖に、何が人生の先輩だって言うのさ…」
モヤモヤするこの違和感の正体。それが分かれば、僕はまだ……強くなれるのだろうか?
****
「くっそ、雲雀の野郎…!」
報告会を終え、自室のマンションのベッドに寝転びながら獄寺は昼間の出来事を思い出した。
雲雀たった一人に、逃げる事で精一杯だった。それも山本の力を借りなければ逃げる事すら難しかっただろう。
これから先、黒曜やヴァリアー、同盟を組んでいるとは言えミルフィオーレだって簡単に倒せる相手じゃない。
それなのに出だしからこんな不調で、10代目が苦しんでいるのに何も出来ないなんて…。
「右腕、失格だ…」
強くなりたい。もっと強く。
せめて、雲雀と対等にやりあえるくらい、強く…。
「ねぇ」
「なんだよ今考え事………って雲雀!?」
窓を見ると、いつからそこに居たのか雲雀が窓辺に座っていた。
ここ五階なんだけど、とかツッコミたいことは山ほどあったが、取り合えずはダイナマイトに手を伸ばす。
「指定時間外での戦闘は禁止なんでしょ?安心しなよ、戦いに来たんじゃないから」
「じゃあ何の用だってんだよ?」
「………君の強さって、なに?」
「は?」
思いも寄らなかった雲雀の言葉に、俺はすっとんきょうな声を上げる。
「沢田や山本武、それに僕も持ってない君の強さってなに?」
「…お前、なんの話してんだ?山本はともかく10代目が持ってないものを俺が持ってるわけ…」
「そう、君にも分からないんだ」
「だからなんなんだよ一体!?」
「じゃあ、僕が見つけるしかないね」
「は?」
一人で納得したような雲雀に、俺は首を傾げた。コイツは何をしたいんだ。
「君のそのバトルウォッチは僕が壊すから」
「はぁ!?喧嘩売りに来たのかてめぇ!?」
「だから、精々必死に守るんだね。僕以外の奴に壊されたら咬み殺すから」
「え…?」
それは、どういう意味だ?だってそれって、俺のこと―――
「今日はそれだけ言いに来たんだよ。じゃあね、獄寺隼人」
「お、おい!雲雀!?」
窓から飛び降りた雲雀は、そのまま夜の闇に消えた。
それを見送った獄寺は、窓辺にしゃがみこむ。
「意味、分かんねぇ…」
この胸に沸き上がる歓喜の正体。それは雲雀に認められた気がして嬉しいだけなのかか、それとも…―――
"じゃあね、獄寺隼人"
名前を呼ばれた。ただそれだけの事なのに……鼓動が凄く速くなる。
「なんだよ、この感覚…」
その答えが分かるとき、きっと何かが変わる。そんな気がした。
「随分とスッキリした顔をしてますね。答えは見付かったんですか?」
翌日、応接室に顔を出した風に雲雀は目を向ける。
「いや、まだ。でも…」
彼と直接話してモヤモヤが少し和らいだ。
だからきっと、
「頑張って生き残ってよね、獄寺隼人」
答えは、すぐそこに―――
end
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アトガキ。
本誌のチンピラ発言がショック過ぎて妄想で補った結果がこれ(笑)
私の中の基本的な雲獄は雲と嵐の恋愛事情が理想なんですが、ここから始まる雲獄もありかな、と。
雲雀さんは無意識に獄寺に惹かれていて、だけど認めたくなくて無意識に興味のない素振りをしている設定です。
だから獄寺が成長して自分の興味の対象になってしまった事に困惑してる感じ。
獄寺も無自覚です。ニブニブです。
こうして10年後には「期待せずに待つよ、獄寺隼人」と愛の籠った台詞になるんだと思います!
でも獄寺君を成長させたのってぶっちゃけ10年後の了平じゃないだろうか(γ戦の時の)
本誌未読のかたは理解しづらいネタですみません;;