小ネタ

□昼下がりの君(雲獄)
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『昼下がりの君』


「猫が二匹」
日課である見回りを終え、一眠りしようと訪れた屋上で雲雀は呑気に昼寝をする二匹の猫………正確には猫のような銀髪の少年と、その飼い猫のような匣兵器を見つけた。
昼休み終了のチャイムはとっくに鳴っており、すでに5限目が始まっている。この学校で堂々とサボりが出来る奴は今となってはこの銀髪の少年――獄寺だけだろう。そして、サボっても咬み殺されない人物もまた、獄寺だけなのだ。
「サボるなら応接室においでって、前に言ったのに」
そう呟きながら獄寺の側まで歩み寄ると、隣で眠っていた瓜がピクリと反応し、雲雀を睨み付ける。しかし、近づいてきたのが雲雀だと認識するとホッとしたように表情を和らげた。
「クスッ。疲れてるんでしょ。僕が此処に居るからゆっくり寝てていいよ」
「にょー」
小さく返事をして再び眠りにつく瓜をみて、随分信頼されたものだと雲雀は笑みを浮かべた。
獄寺は瓜がなつかないと散々嘆いていたが、実際の所は瓜は獄寺の事を誰よりも大切に思っている。しかしそこは飼い主に似たのだろう。ついつい喧嘩腰になってしまう瓜を見るのは小動物好きな雲雀にとっては見ていてとても愛くるしく思える。

獄寺の隣に腰をかけて、そんな一人と一匹を愛しそうに眺めていると、上空から聞き覚えのある声が聞こえた。
「ヒバリ!ヒバリ!」
「君、ちょっと静かにしなよ」
雲雀が手を伸ばすと、上空から飛んできたヒバードが雲雀の指に着地する。雲雀の言葉を理解してるのかしていないのか、可愛らしく首を傾げるヒバードを瓜の背中に乗せる。すると、ヒバードも疲れていたのかうとうとと目を閉じた。
瓜もヒバードが背中に居ること慣れたのか、嫌がるどころか心地よさそうにしている。
「仲間外れは可哀想だよね」
そう言って雲雀は匣に炎を注入し、己の匣兵器であるロールを出した。獄寺の瓜のように頻繁に外に出したりはしないのだが、こうして時々瓜やヒバードの遊び相手にと出してあげると嬉しそうにするロールを瓜の隣に置いた。
「きゅ?」
「たまにはロールもゆっくりしな」
雲雀の言葉にロールは嬉しそうに瓜にすり寄った。
小動物が揃って昼寝をする姿は、獄寺が見たら写メだなんだと騒ぎ出すだろう。騒いだ結果、瓜が目覚めて攻撃されるから無理な話なのだけれど。
「じゃあ、代わりに僕が撮ってあげようかな」
そう思って雲雀は携帯を掲げるが、携帯の画面に写るのは瓜達ではなく、その隣で起きる気配もなく眠っている獄寺だった。
「ワオ、こっちの方が可愛いね」
すっかり目的を忘れてシャッターを切る。これは壁紙にしようと決意し、保存をするとそのまま電話の画面へと切り替えて電話をかけた。
「ああ、草壁。僕が良いと言うまで誰も屋上に近づけさせないで」
誰かが階段を登って来れば眠っていてても気付く自信はあるが、今のこの時間を誰にも邪魔はされたくない。そう思い獄寺の隣に寝転び、雲雀は空を見上た。
「んっ…」
「獄寺?起きたの?」
そう獄寺の方へ首を傾けるが、どうやら起きたの出はなく寝返りをしただけのようだった。瓜達に背中を向け、こちらを向く獄寺に手を伸ばすと、伸ばした雲雀の手を獄寺はぎゅっと握りしめた。
「獄寺…?」
「……ん、……うり…」
「………僕と瓜、間違えないでよ」
少しイラつきを覚えた雲雀だが、自分の手を握りしめ幸せそうに眠る獄寺の手を雲雀もゆっくりと握り返した。
その笑顔が他の誰でもない、自分だけに向けられたものだと信じて、雲雀もゆっくりと目を閉じた。


目が覚めたら、こうして握られた手に君はどんな反応をするのだろうか―――?


end



オフの時に配布したペーパー小説だったのですが、なぜか凄い文字化けしていたので再録しました;;
他人任せでちゃんと確認しなかった私の責任です(;o;)ペーパーをお手に取って下さったかた、大変失礼致しましたm(__)m

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