花ざかりの君たちへ
□はだけた服(10のお題)
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ある日の夜。
いつものように佐野が練習から帰ってくると、その部屋にいるはずの同居人はいなかった。
(芦屋いねえのか・・・。風呂か?)
とすぐにガチャっと音がしたかと思うと、風呂上りの瑞稀が出てきた。
「あ、お帰り佐野。ご飯もう食べた?」
「ああ。」
「じゃあお風呂入っといでよ。俺先に入らせてもらったから」
「そうだな」
10分後・・・。
瑞稀は爆睡中であった。
「おい。芦屋!こんなとこで寝るなって。おい!!」
うつ伏せになって寝ていた彼女を揺する。
「仕方ねーな・・・。」そっと彼女を抱き上げようとしたその時―。
(ボ・ボタンが外れてる・・・・)パジャマのボタンの留めが甘かったのか、第一ボタンが外れていた。
見事にパジャマがはだけ、見えるか見えないかの微妙なラインを保っていた。
(どこまで無防備なんだよこいつ・・・。発見したのが俺じゃなけりゃとっくの昔に襲われてるぞお前・・・)
俺じゃなけりゃ・・・?
いや、俺はこいつに触れたいって思ってる。
だけど今こいつに触れたら・・・。
芦屋が芦屋じゃなくなる気がする。
いつだって眩しいくらいの笑顔で俺を受け止めてくれる彼女。
その笑顔を絶やさないでおきたい。
そっと自分の思いを閉じ込めるように、彼女のパジャマのボタンを留めて、2段ベッドの上段に寝かせる。
彼は、その寝顔があまりにも愛しくて、優しく彼女の髪の毛に口付けた―