花ざかりの君たちへ

□星空(お題)
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11月。
朝や夜はすっかり冷え込むようになり、いよいよ冬の訪れを思わせるような夜。
2人は日課である裕次郎の散歩へいつものように行こうとしていた。

「なんか最近妙に冷え込むよね。もうすぐ冬かぁ・・・」
「そうだな。芦屋、お前風邪ひきやすいんだから体あんま冷やすなよ。ホラ、マフラー巻いとけ」
マフラーでぐるぐる巻きにされるあたし。でも佐野のさりげない優しさに思わず顔がほころぶ。

「うん、ありがと。 佐野もさ、風邪には気を付けてよ。アスリートなんだからさ。」
「おう。でも俺はお前に倒れられたりしたらそっちのほうが気がかりなんだからよ。だから・・・その・・・。」
「何?」
「お前が隣で笑っててくれれば、俺はそれが一番元気出る。」

ボッ
佐野・・・。
そんな風に言われると、あたし嬉しくて仕方ないじゃないか。
あたし今、顔赤いのかもな・・・。


「あ。」
ふと空を見上げると、満天の星空が広がっていた。
月明かりが無いせいか、いつもよりも星が多く見えてとても綺麗だ。

「佐野!!空すごい綺麗だよ!!」

裕次郎にも「綺麗だねー裕次郎。」と言うと、それに返事をするかのように「ワン!」と鳴いた。
「秋だからな。秋冬は空気が澄んでて見える数も多いし、綺麗に見えるんだ。」

ちらりと佐野の横顔を盗み見る。
いつ見ても、綺麗な顔だ。
特に瞳は、一番最初に好きになった場所。
星空に負けないほどの輝きと強さを持った瞳だ。

「星ってどうしてこんな優しい気持ちになれるのかな?」
「え?」
「俺、カリフォルニアにいた時、クラスで馴染めなかったときがあったんだけどさ、辛い事があったらいつも佐野のこと思い出して、がんばろうって思えてたんだけど・・・・。」
「けど?」
「あの頃は実際佐野と会ったことなんて無かったから、ずっと会いたかったんだけど。せめて空は繋がってるって思って、同じ星空を時間の差があっても見ていたいって思ってよく星空を見てたんだ。
そうしたら気持ちが落ち着いて、穏やかな気持ちになれたんだ。」

な・なんかかなり恥ずかしいこと口走っちゃったような・・・。

「そっか・・・。」
佐野はそう言った後、優しくクシャっとあたしの髪を撫でる。

(そんな遠くからそんな風に思っててくれたんだな・・・)

「じゃあそん時のお前は、まさか今頃俺と・・・」
「え?何?」
と言った次の瞬間―

夜風のせいで冷たくなった唇が触れるのを感じた。
だが、それは次第に温かく、甘くなっていった。

「こーんな事になってるなんて思いもしなかっただろうな。」

しまった・・・。またやられた・・・。
「佐野!もう裕次郎が寒そうでしょ!早く帰ろ!」

真っ赤になってどすどすと歩く彼女を穏やかな瞳で見つめる彼。
2人にとっての散歩の時間は、寒くても優しい―
ほんのりと温かい心地の良い時間なのだ。

END


おまけ。
(うー、あの2人はたまに僕のこと忘れるワン。でも2人が幸せなところを見るのは僕も幸せになるワン♪  ・・・ただちょっと恥ずかしいときもあるワン・・・)
以上、裕次郎視点でした。
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