花ざかりの君たちへ

□温泉旅行
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「わぁ〜、すごーい!!」

彼らは今、1泊の予定で温泉旅行に来ている。
その理由は、高校時代のクラスメイトである萱嶋から貰ったチケットだ。

「この前近くに住むおじいさんの家のお払いしたらお礼にってくれたんだけど、よく見たらペア専用だったから君達2人いっておいでよ。」

瑞稀は笑顔で受け取っていたが、佐野は「2人っきりってことだよな・・・・」と苦悩していた。

・・・まあ、めでたく婚約もしたことだし、良いではないかということで。
しっかり受け取っていた。

2人には聞こえない声で萱嶋が「まぁあとは2人の気持ちと成り行き次第ってことで・・・」とつぶやいていた事は彼らは知る由も無かった。

「ねぇ佐野!このお部屋露天風呂付いてるよ!!すごい豪華な部屋だね〜。何か萱嶋に申し訳ないなー・・・」
心配げな表情を見せた彼女に佐野は「まぁ、良いんじゃねーの。せっかくだし。」
「・・・そだね。じゃあ早速・・・って言いたいとこだけど、まだお風呂入るには早いしー。お土産でも見てこよっかな。ほら、佐野行こ!」

「おう。」

家族や友人へのお土産を熱心に選ぶ彼女の姿を穏やかな眼差しで見つめる佐野。

「ねぇ、佐野も何か買ったら?森くんとか喜ぶんじゃない?」
「そーだな。たまには実家に何か買うか。じーちゃんの家に買うついでだし・・・」

(ついでとか言ってるけど、実はすごい熱心に選んでたりするし)

瑞稀は、そんな彼を少し可愛いと思った。

そうこうしている間に時間が経ち、夕方となった。

「そろそろ大浴場のほう行ってみようか。これくらいの時間ならまだそんなに混んでないと思うし。」
「じゃあ行くか。」

佐野は知っての通り、風呂好きなので長風呂になるであろうと瑞稀は予想が付いていたが・・・。

「いくらなんでも遅すぎる〜!!」
瑞稀は大体30分ほどだったが、佐野はなんと、彼女の2倍に値する1時間ほど出てこなかったのである。

「悪ぃ。温泉だったからつい長くなっちまった。湯冷め・・・してねぇか?」
「大丈夫。あったかいお茶飲んでたし。」
「ごめんな。待たせて。」
「もう良いよ。行こう。」

瑞稀は彼がこんな風に気遣ってくれる事が嬉しかった。




部屋に戻って、瑞稀が旅行カバンの中から化粧水等の入ったポーチを出す。
ちょうど首を傾げていたので、浴衣から覗く白いうなじに佐野は目を奪われていた。

そして次の瞬間、彼女のうなじに口付けていた。

「ひゃっ・・・。」ビクンと瑞稀の体が躍動する。

佐野は一度火がついてしまった本能を止められる筈もなく、彼女を引き寄せ、うなじから首筋、唇や耳元といった所に唇を這わせた。

「これ・・・邪魔。」
そう言って、彼女の髪から髪をまとめるために使っていたくちばしピンを取った。

はらり。と彼女の肩下まで伸びた髪の毛が解放され、甘い香りが彼の鼻腔をくすぐった。

「さ・・・・佐野。あの・・・、や、やるならもっと遅い」
「お前がそんなナリしてるのが悪い。あきらめろ。」
「そんなナリって何・・・んっ」佐野は真っ赤な顔でそう言う瑞稀の唇を塞ぐ。

唇を離して、「まぁ、襲われたくなかったなら髪の毛、下ろしておくんだったな。」と一言言う。

その理由はひとつ。
髪の毛をまとめていたことで、うなじが剥き出しだったからだ。

いつの間にか肌蹴られた浴衣から佐野の大きくて綺麗な掌が瑞稀の肌に触れた・・・・その時だった。



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