花ざかりの君たちへ

□内緒の時間
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ある日の5限。
その日は数学だったが、急遽数学教師の事情で自習となった。

それぞれ出された課題に取り組んだり、分からないことを教え合っていたり、少しがやがやとした雰囲気のクラス。

数学が苦手な瑞稀は佐野に「ねぇ佐野〜。これ分かんないよ・・・」
「これか? これはこの公式を当てはめて・・・・」
「ん゛〜。全然わかんない・・・。」
「お前・・・やる気あんのか?」
「ない。」(←きっぱり)

・・・ここまできっぱり言われると、佐野も教える気を失くす。
だが「分からない」と言われたからには分かるようになるまで教えるつもりだったので、佐野はある意味での強行手段に出た。

そっと周りを確認し、隙を見て彼女の柔らかな唇に一瞬だけ、自らの唇を重ねる。

「(小声で)佐野ッ!何やってんの!もし周りにばれたら・・・」
「ばれねーよ。お前が騒がない限り。」
「うぅ・・・っ////。(こっちの心臓が持たないよ・・・)」

「でもまぁ、これでやる気出たろ?」

その後もXやらyやらの文字や数字と悪戦苦闘し、それでも佐野による熱血(?)指導により、大分理解できるようになっていった。

「わーい!課題終わりー!!佐野、本当にありがとね!佐野がいなかったらおれここまで出来なかった!」と満面の笑みを浮かべる瑞稀。

「ほぇ〜、瑞稀全部出来たんかい。」
「うん、佐野にほとんど教えてもらいながらだけどね」
(羨ましいのぉ・・・泉)
「泉ぃ〜、俺にも教えとくれ〜」
「はいはい」

手短にさっさと教え、それでも理解できなければ萱嶋のとこにでも行け。と言っておいた。

この2人・・・、課題を解いている間中、こっそりと手を繋いでいたのである。
あくまでも机の下の死角になっているところでそっと。
指と指を絡め合い、お互いの温度を感じ合う。

2人だけが知っている、内緒の時間―
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