ミニNOVEL

□独占欲
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雨が降ってきた。
傘なんか持ってきてなかったから、びしょ濡れで帰るのかとため息混じりで窓に当たる雨を眺める。

なにも放課後に降ってくることねぇのに…

「降ってきたねぇ…」

小さな声で政吉が呟いた。
それに小さく頷いて、二人同時に席を立つ。

「傘持ってきた?」

「いんや…」

「涼輔が持ってくるわけ無いかぁ…北川と帰ろっと。」

「え!俺は!?」

確かに北川は傘を持ってきてる。朝その姿を見たからそれは確かだ。

でも流石に酷くないっすか?一人ずぶ濡れで帰れと?

「九条が居るでしょ。傘持ってきてそうじゃん?」

「弘美……」

確かに持ってきてそうだな。
それに持ってきてなくても、二人してずぶ濡れで帰るのも悪くない。



ってわけで、弘美の教室へ移動中。
騒がしい廊下を歩いていると、廊下の隅に立つ弘美の姿が目に入った。
教室に居がちな弘美を廊下で見るのは珍しい。
声をかけようと口を開くが、どうやら弘美の様子がいつもと違う。

頻りに腕時計を見ながら辺りを見回して、誰かを捜している様子だ。


俺じゃないことは確か。だって約束なんてしてねえし。


……ってことは誰。


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