ミニNOVEL

□受け三人衆
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校舎を出て中庭を歩いていく。この先にある小さな庭園には、季節外れの花が所狭しと咲いている。

どうやったら紫陽花と向日葵が共に育つのかといつも不思議に思っていたが、今となっては理由などどうでも良くなっていた。

只綺麗ならそれで良い。そう思わせる程、ここは綺麗だった。

初めてこの庭園を見つけた時は、正直花なんてどうでも良くて。
いつか花好きな弘美がここを訪れるのではないかと、それだけを期待していた。弘美との接点を作ろうと、健気に毎日のように通い詰めて。
今はそんなことしなくても弘美と一緒に居られるから、ここに来るのも久しぶりだ。

豪華な彫刻が施されている庭園の扉を少し開ければ、ギィという小さな音と共に花の匂いがふわりと俺を包む。

前までは歩き慣れていた道を懐かしみながらゆっくりと進めば、少し開けた空間に真っ白な丸テーブルと、扉と同じようなデザインの椅子が二つある。

前までは、その椅子に座って、いつ弘美がこの場所を見つけるかとドキドキしながら耳を澄ませていた。

今日はゆっくり花を見よう。
そして弘美にメールして、この場所を教えてやるんだ。
二人で椅子に座って、ゆっくり花を見ながら過ごすんだ。

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