ミニNOVEL
□愛は始まるのか
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side 久留米琢磨
「なぁ琢磨、瀬田の前髪の下ってやっぱり見たのか?」
瀬田と付き合う事になって一ヶ月程過ぎた頃。本日最後の授業中、シロが小さな声で俺に問いかけてきた。周りの奴らは聞こえないフリをしているけど、俺の答えを今か今かと待っているのが嫌でも分かる。
開いた窓から入ってくる風に髪が揺れて心地良い、なんてメルヘンな事を思っていた俺の気分がぶっ壊されてしまった。
「…見たけど?」
「マジ!?どんな顔してんの?」
「教えない。」
「なんでだよ!」
「だって…」
だって、格好良いなんて言ったら絶対みんなが見たがるに決まってる。そうじゃなくても隠されているものは見たくなるってのが人間の性だ。そして瀬田の素顔を誰かが見てしまったら、忽ち虜になってしまうに決まってる。あの美貌だ。無理もない。
一気にライバルが増えて、瀬田も俺以外の奴に目移りしてしまうかもしれない。
そんなの絶対嫌だ。
俺は瀬田の顔を見て好きになったんじゃない。それなのに、誰かが瀬田の顔に惚れて、その上奪われたなんてなったら堪ったもんじゃない。
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