星矢book
□雨がくれた運命
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滝のように雨が降る中をサガは走っていた
(シオン様の言うこと聞いておくんだった……)
今更後悔しても遅いが、そう思わずにいられない
それほど激しい雨だ
「あっ……」
いつも通りすぎるだけの樹の下
そこで雨宿りしようと思っていたサガは足を止めた
先客がいたのだ
躊躇していると向こうの少年がサガに気付いた
「君!!何してるの、早くこっち来なよ!!」
どうしよう
その言葉だけがサガの頭で回転する
するとしびれを切らした少年が樹の下から飛び出した
「ほら!!」
熱い手に捕まれたサガは少年が引くままに歩く
「あぁ、びしょびしょだ」
少年は服の袖で濡れたサガの顔を拭ってやった
サガは擽ったそうに目を細める
それに、少年の手が止まった
「お前も、びしょ濡れだ」
その隙にサガも少年と同じよう顔を拭ってやろうと手を伸ばした
が
「…………」
「…………」
べちょり、と湿った音を立てて服は少年の顔に張り付いた
長いこと雨の中を走っていたのだ
服だって大量に雨水を吸い込む
最初に笑いだしたのは、少年だった
つられてサガも笑い出す
「すまない、余計濡れてしまったな」
「このくらい大丈夫さ」
言って、少年は豪快に自分の服で顔を拭ってみせた
「俺はアイオロス。君は?」
「サガ。……ってことは射手座?」
「そう!!サガも聖域の関係者?」
「まぁ、な」
双子座、と言うことは黙っておこうとサガは思った
驚かせてやろう、と考えたからだ
アイオロスは再び口を開く
他愛もない話を続けているうちに、張り付いてくる衣服の不快感など二人とも忘れてしまっていた
それほど長く、サガを話に引きずり込ませていた
気付けば雨音が静かになている
雲間から光が覗いた
同時に空を見上げた二人の目にはいったのは
「うわぁ……!!」
「虹……」
七色の架け橋
水と光が繰り広げる幻想的な光景だった
お題配布元
ひよこ屋