星矢book

□天使の涙
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大きな鳥だった
白く、王者の輝きをみせる鳥
しかしその立派な羽毛はぼろぼろで血に染まり、辛うじて飛んでいる状態だ
どこか、休める場所を
気流に乗りながら羽を休める場所を探す
そして目に止まったのは他のものよりも頭一つ分抜きん出た樹
風を読みながらそこを目指すことにした






やっとの思いで樹の枝へたどり着いた鳥は大きく身震いした
血に染まった赤い羽がいくつか地に落ちる
それに見向きもせず鳥は羽を繕いはじめた
あぁ、酷い目にあった
とでも言いた気である
熱心に己の翼を整える

「珍しいな。私を止まり木にするなど」

「!!」

突如
そう、突如隣から声がした
驚きのあまり飛び去ろうとした鳥だったが、羽がうまく広がらない
落ちる
しかし体が叩き付けられることはなかった
その前に声をかけてきた青年が手を伸ばしたからだ

「すまない。驚かせたようだな」

優しい声だった
そして鳥は初めて青年の姿を直視する
蒼銀の髪に空色の瞳
肌の色は恐ろしいほど白く、人間なのか疑ってしまう

「怪我をしていたのだな」

そっとかざされる掌
感じるのは暖かい光
鳥はうっとりと目を閉じ、その優しい力に身を委ねる

「……私の力ではこれが限界だ」

声と同時に下ろされる掌
パッと目を見開いた鳥は翼を広げてみせる
傷は見事に塞がっていた
しかし羽はところどころ欠損した状態のままだ
これでは、飛べない

「羽が生え揃うまでここで休んでいくといい」

慈しむように頭をなでられた鳥は疲労により眠りの縁に誘われる
青年の言葉に甘えよう
薄れ行く意識の中、そう思った




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