星矢book

□罪と罰
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見渡すかぎりの闇色
そんな空間に星矢は立っていた
何故自分がこんな所にいるのか、と最後の記憶を思い出そうとしたが、生憎ハーデスの剣に胸を貫かれた所でぷっつりと途切れている
さて、どうしたものかと腕を組む

「………っち……や」

「誰だ……?」

ふと聞こえた声に思わず振り返る
しかしと言うかやはりと言うか、そこには誰もいない
気のせいか、と思うと

「そう、こっちだよ星矢」

今度ははっきりと聞こえた
自分の名前まで、しっかりと
体ごと後ろに向いたがあるのは闇だけ
だが

「早く、早く来て。取り返しがつかなくなる前に」

切羽詰まった声に呼応するかの様にざわりと世界が揺らめく
星矢の体にいやな衝撃が走った
何かが起きはじめている
とてつもなく不安になる何かが
その不安を振り切るようにして星矢は駆け出した
何処に向かうかは声が教えてくれる

「そっちは違う」

「真っ直ぐ……そう、真っ直ぐだよ」

「…ま……ぐ……」

「待ってくれ!!」

次第に遠くなる声
不安が、焦りが、恐怖が纏わり付く
早く追い付かなければ
そう思うのに足は言うことを聞かない
涙が出そうになる
その時

「……やっと、捕まえた」

捕まれたのは右手首
闇ばかりの世界ではこんなに近くで声がするというのに相手の顔が見えない

「ああ、ごめん。驚かせたよな」

今明るくするから、との言葉と同時に闇が引いて行く
不思議と明暗差で視界が悪くなると言うことはなかった
そして星矢はようやく声の主、現在手を握っている相手を見て驚いた

「……………俺?」

「違うよ。俺はテンマ。あんたの前世だ」
自分に似た容姿の少年
纏っている神聖衣までもが同じだった
しかしその表情はとても真剣で、時間の無さを物語っているようだった

「簡単に説明するとここは深層心理の世界。魂の記憶が蓄積された一番深い部分だ。そして……」

すっ、とテンマが手を翳すと鎖が幾重にも絡んだ大きな鉄の扉が現れた

「この先に一番最初の魂の持ち主がいる」

「ど、して……」

何故そんな話をするのか
星矢には全く理解ができなかった

「今星矢の魂と肉体は神の力により傷つき死に瀕している。それを治すには同じ様に神の力が必要なんだ」

「まさか」

「そのまさかだよ。初代は……とある女神だ」

一瞬
ほんの一瞬だったがテンマは苦しげに顔を歪めた
しかし直ぐに真剣なそれに戻す

「海界、そして冥界との戦いに勝ったアテナには恐らくこの先、天界との戦いが待っている」

「!!」

「女神の力は強大だ。その力のせいで前世の記憶が蘇る可能性も否めない。その記憶のせいで辛い思いをするかもしれない。それでも」

「当たり前だろ!!俺はアテナの聖闘士だぜ。アテナを守のが役目だ」

例えどんな真実を突き付けられようとも
自分の力が及ぶかぎり傍に仕え、剣となり盾となるのが使命なのだと

「……なら、進むといい」

鎖が音をたてて外れて行く
重い音をたてつ扉が開く
この先にいるのが己の魂の根源
扉の向こうに長く続く回廊は先が見えない

「時間がない。魂はもう大分深いところまで傷ついてる。肉体も長くはもたないから、早く」

とん、と背中を押され扉を潜る

「振り向かないで、さあ」

「……ありがとう」

言葉の通り振り向く事はしなかった










「よく来た」

回廊の先
まさに玉座と言うに相応しい椅子に腰掛け待っていたのは漆黒の髪と琥珀の瞳を持つ女神だった

「ここに来る前にテンマから話は聞いたと思うが」

「アンタの力があれば生き返れるんだろ!?」

「……せっかちなのは何時の代でも変わらんな」

結論ばかりを急いだ言葉に女神は苦笑した
魂に刻まれた性格でもあるのか、と

「いいか。お前は私であり私はお前だ。力もまた然り。
だが今のお前が私の力を使えないのは何故か。それはお前の精神が未熟故に私を受け入れてないからだ。
ああ、未熟なのを恥じる必要はない。お前の歳で成熟していたら恐怖だ。
話を戻すが、本来人間は前世の記憶を受け入れられるように作られていない。あまりに膨大な情報量に記憶の混濁が起こるからだ。
そのため記憶は魂にのみ残されるようになった。人の生が終わり魂になるとその記憶の上に新しい基盤を敷きまた新しい生が始まる。
まれにこの基盤層に亀裂ができ前世の記憶を一部だけ持って生まれるやつも居るがな。
……ここまでは大丈夫か?」

「な、なんとか……」

嘘だな、と女神は思った
頭上にハテナマークが乱舞しているのが手にとるようにわかる
だがこれ以上かみ砕いて説明している時間は無い

「だが、私を受け入れると言うのはそんな奴らとは話が違う。
私は魂の根源であり、そのものである。
つまり全ての生の記憶を有している。そんな私を受け入れればお前の幼い精神は計り知れない負荷を受けるだろう。
最悪廃人かもな。
……それでもお前は己の女神のため、受け入れると言うのか?」

「なんか途中よく分からなかったけど、俺はこのまま何もしないで死を待つより可能性に賭ける!!」

「……そうか」

ふ、と女神は笑った
苦笑や嘲笑と言ったものではなく、思わず漏れてしまった微笑み

「ならば全てを授けよう。春の女神、そして冥府の女王の力を」











最初に聞こえたのはぴ……ぴ……と規則的な機械音
次第に静かだが確実に動いているいくつかの機械の音が耳に入ってきた
ゆっくりと開いた瞳が映すのはひたすらに白の世界
感覚が戻りはじめ、自分に繋がったいくつものコードに、ここは病院なのだと気づく
無理矢理コード類を引き抜き上体を起こした
……震えがとまらない
手に入れた記憶が、恐怖と後悔を呼び起こす

「ハーデス……俺は……俺はっ!!」














魂が求めるほどに愛した人を手に掛けた



End

書きたい事だけ書いたらgdgdになっちまった\(^o^)/
まあ、そこが私クオリティwww

記憶が魂に上塗りされてるって所は私が輪廻転生の話を書くときの根源にあるものです
こんなんだったら萌える、みたいな設定←

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