FF短編book

□導きの花
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はるか昔
まだ神々が地上にいた頃の事





フリオニールは森の中、泉のそばに広がる花畑で横になり瞼を閉じていた
陽射しは温かいものの、風は若干冷気を含んでおり、夏の終を告げているようだ
そっと伏せていた瞼をあげれば、そこにあるのは夏とは明らかに違う顔をした青空
穀物の女神たる母が忙しくなる時期が近いことを実感する
その時、一際強い風が通り抜けフリオニールは体を震わせた

冷え切る前に帰ろう

そう思い上体を起こしたが、目に入った不自然な光景に首を傾げた
それは水辺に咲く一輪の花
寝る前にはなかったはずのそれはとても美しい赤をした野薔薇だった

「いつの間に……」

不思議に重いながらも野薔薇に近づく
そしてその花弁に手をのばした瞬間
突如大地が割れ、そこから首のない馬が牽く漆黒の馬車が現れた

「!!?」

驚きのあまり硬直したフリオニール
そんな彼を馬車から伸びた腕が少々乱暴に掴み、引きずり込む

「は、放せ!!」

抗議をしたフリオニールだったが相手がきくわけもなく、馬車は大地の中へと帰って行ったのだった








がたがたと馬の歩調に合わせ揺れる馬車が歩くのは大地の下にある死者の国
亡者の列の横を軽やかに通り過ぎて行く

「……で、誰なんだお前」

「冥府の王だ」

どれくらいした頃か
フリオニールは沈黙に耐え切れず、目の前に座る己を誘拐した犯人にずっと気になっていた疑問を投げ付けた
そしてその答えに関しての記憶を捜し当てた

「嗚呼、引きこもりのマティウス」

たしか母がそう呼んでいた、と続ける
相手の眉間にシワが寄ったが否定しないあたり事実なのだろう

「何で俺を連れて来たんだ?」

「春の君を娶るためだ」

「…………すまん、聞き取れなかった。もう一度言ってもらえるか?」

フリオニールはどっと冷や汗をかきながら言った
なにやら信じがたい単語が会話の中に沢山含まれていた気がしないでもない

「春の神である貴様を娶るためだと……待て、なにをする気だ」

呆れた顔をしながら言い直すマティウスの言葉を全て聞き終える前にフリオニールは馬車の扉へ手をかけた

「この馬車から飛び降りて地上に帰るに決まってるだろ!!」

しかしその前に強い力で引き戻され、先ほどまで座っていた所に押し倒された

「貴様に拒否権などない」

さらりと落ちてきた金の髪と嬉しそうに笑う顔が綺麗だ、とフリオニールは思った





End


ギリシャ神話のハデス×ペルセフォネのパロディでした\(^o^)/
この話が大好きすぎて自重できませんでした(笑)

本当はフリオが柘榴を食べるとこまでやりたかったんだけど、デメテル役とゼウス役が決まらなくて挫折orz
あと、ハデスが浮気して怒ったペルセフォネが浮気相手をミントにしちゃう話とか
しかしフリオが嫉妬でそこまでする事はなさそうなのでこれまた挫せt(ry

いつかエロス×プシュケのパロをセフィクラでやりたい←
でも弓矢を使う英雄とか想像できんのだがwww

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