DFF連載book
□09
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知らない
知りたくもない
自分の居場所は此処だけだ
いまさら過去の記憶なんて望まない
――本当ニソウ思ッテル?
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時は少し遡り
「……まだ、話せない」
髪の先から雫をこぼしながらスコールは答えた
「そう……」
対するセシルは想像していた通りの答えに苦笑を浮かべる
彼の性格からして、頼ると言うことは決して無いのだ
「でも、本当に自分じゃどうしようもできなくなったら、ちゃんと言ってね。スコールは一人で抱え込みすぎるから」
それに答えることも頷くこともせず
ただ膝の上に乗せた拳をにぎりしめた
「……は」
「ん?」
「ティーダは、なにか……」
スコールの部屋へ来る前に隣のティーダの部屋に寄った時のことを言っているのだとセシルは思い至り、口を開く
「スコールが話さなきゃ自分も話さないって」
「そう、か」
少しだけ口の端を持ち上げてスコールは微笑んだ
自分達兄弟の前でしか見せない笑顔
それに安心したセシルはスコールの首にかかったままのタオルを掴み、頭を拭いてやった
「はい、頭ちゃんと乾かしたらリビングに行こう」
「……?」
「デザートぐらい食べないと、フリオニールが心配するからね。ティーダも部屋で待ってるし」
「……ああ、」
わかった、と続けたかったスコールだったが、隣から何か大きなもの――例えば人間――が床に落ちたような盛大な音に遮られた
続いて乱暴に開かれた扉の音と、急いで階段を駆け下りる音
「…………」
「…………」
何があったのか、と二人は首を傾げた
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