DFF連載book

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真実とは不変の過去であり、現在であり、未来である
それ故に残酷でいて、優しく
真実を知ることが必ずしも幸せに繋がるわけではない










それでもお前は真実を求めるというのか


=====




「エクスデスから白鳩便がきおったぞ」

ほれ、と暗闇の雲が差し出した手の上には小さな鳩
その足にくくりつけられた筒の中から取り出した紙には簡潔にこう書いてあった

「24時に七番ラボ……ですか」

紙を受け取ったアルティミシアが心底面倒そうにつぶやく
あそこはどうにも苦手だ
あの施設の研究を唯一受け継いでいるだけでなく、ともすればこちら側にまで危害が及ぶ
――主に検査という名の実験で

「……守る必要などないのではありませんか?」

「そうもいかないんじゃないのぉ?」

「契約と王命もある」

たまには痛いめをみればいいのだ、と暗に言うが、珍しくケフカが否定し、ゴルベーザもそれ続いた

「そもそもその契約に従う義理などありません。雲もそう思いませんか?」

突然話しを振られた暗闇の雲はいつの間にかいれていたお茶を飲む手を休め、しばし考える

「……ノーコメントじゃ」





ティーダはご機嫌だった
いつもスコールに纏わり付くサイファーがあろうことにアンジールの講義中に居眠りをし、現在絶賛説教中なのだ
アンジールの説教の長さはガーデン随一である
休み時間が潰れるのはもちろん、下手をしたら放課後に呼出しだ
そういうわけで、久しぶりにスコールを独占しているティーダは上機嫌であり、次の体術の実習のため手を繋いで――この辺りにティーダの浮かれっぷりが窺える――移動中だった

「やっぱりこの訓練場建て替えるっスね」

「ああ、この間ついに壁のコンクリートが剥がれたらしいな」

その道中、座学用の校舎と隣り合わせに建つ年季の入った訓練施設を見上げた
既に足場が組まれた状態で、いつでも工事が始められる状態だ
そして周りには赤いコーンが施設から1メートル程離れた位置に置いてあり、生徒が近づかないようにされている

「ほら、もう行くぞ」

「あ、まっ……!?」

ぼーっと見上げていたティーダの腕を引くと、すぐに隣へ来ようとした体が突如うずくまった

「どうした!?」

何事か、と慌ててしゃがみ込みティーダの顔を覗き込む
額には脂汗が浮かんでおり、息も荒い
そして――手で押さえ込んでいる右目

「目が痛むのか?医務室に……」

スコールの言葉の途中で、ティーダが顔を上げ、目を見開く
その瞳は右目だけ赤に変色しており、おもわず息をのんだ

「逃げてスコール!!」

どん、と力強く押された体
同時に、上から嫌な音が聞こえる
見上げた先には、ティーダ目掛けて落ちてくる巨大なコンクリート片
体制の崩れた今、できることは――皆無

「ティーダっ!!」

黒い風が、隣を横切った





そこを通り掛かったのは本当に偶然だった
とうの昔に卒業したガーデン
そこに高等部新一年生相手に講演をしてくれなど、頼んできた相手があいつじゃなければ絶対に断っていたのに、と、ジェクトは頭をかいた
スーツでこいと再三言われたが、あれは窮屈すぎて嫌いだ
普段のラフな格好だが、ジャージじゃないだけ有り難いと思ってほしい
思い足取りでガーデン内を進む
昔と全く変わっていない様子に、そういえば近道があったな、と校舎と施設の間の狭い道に曲がった
そして目にしたのは、訓練着をきた幾人かの生徒の姿
そして

「逃げてスコール!!」

叫びと共に、古い施設の3階部分の外壁が落ちる
スコールと呼ばれた生徒を逃がした少年目掛けて
認識するより先に足が動いていた
今なら世界新出せているのでは、と思うほど速く

「ティーダ!!」

スコールと、生徒達の叫びが響いた





「いっ……ちち…………」

スピードを殺さずティーダの体を頭を守るようにして抱え込み、その勢いのまま体を転がせる
少しして背中に衝撃を感じ、止まったかと思えば土煙が舞い上がり、小さな破片が体に降り注いだ
煙が落ち着いた頃に体を起こしたジェクトは下敷きにしていたティーダの様子を伺った

「おい坊主、大丈夫か?」

「…………」

返事はない
ただ、なにが起こったか分かっておらず、呆然としているようだ
その時、ティーダの右目が赤から青へと色を変えた事にジェクトは目を見開いた

「お前、まさか……」

「ティーダ!!」

言葉は駆け寄ってきたスコールにより遮られる

「怪我はないか?痛むところは!?」

「え、あ……大丈夫、っス」

あまりの剣幕に、ようやく通常に戻りはじめたティーダはしどろもどろに答えた

「っ……心臓が止まるかと思ったぞ」

ぎゅう、と握られた手が震えている
それにもう片方の手を添え、ごめん、と謝った
そしてジェクトに向き直り、一瞬――そうとは分からないほど僅かな時間――体を硬直させたあと

「ありがとう、助かったっス」

「おう、いいってことよ」

ニカッ、と笑うジェクトに安堵のため息をついた
が、野次馬の生徒たちと、事態収拾に出てきた教師の中に自分の兄弟達がいることを確認し、二人して顔を青くしたのだった





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スコティでもティスコでもジェクティでもないと言い張る^p^

589組も好きだけど、17才組も好きなんです
ぎゅっと手を握って喜ぶティーダと、困惑しつつも内心嬉しくてしかたないスコールとか萌えます←

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