FF7連載book

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「あらあら、大変だったわねぇ」

のんびりとした口調で言ったのはこの喫茶店の女主人――レンリだ
クラウドを噴水に突き落とした女性――ユーリの姉らしい
そして現在クラウドが借りている服一式は末っ子の弟の物との事だった
風呂からあがったクラウドはこれまでのいきさつをかい摘まんで離した結果、上記の反応だったわけだが

「とりあえず、今日は泊まって行きなさいな。服も今日中には乾かないと思うし」

ね、そうしなさい
と輝かんばかりの笑顔で言われて断れる者がいるだろうか
例に漏れずクラウドは断りきれず

「お…お願いします」

と頷いてしまったのだった










夜になると喫茶店は一変
なんと店の裏側が鉄を打つ音を響かせる鍛冶屋になったのだ

「午前の10時から午後3時までは表で喫茶店、午後6時から午前0時までは裏で鍛冶屋をやってるんですよ」

そうクラウドに教えたのはここの姉弟の末っ子であるヒビキだ
軽く首を傾げると空色の髪が幾房かはらりと零れる様が綺麗だとクラウドは思った

「3人で、ですか?」

「えぇ。鍛冶屋は僕が設計図を作って、レン姉さんが鉄を打ち、ユーリ姉さんが仕上げをします」

「ちょうど昨日までは修羅場だったのよ。ユーリったら一週間寝てなかったのに終わった途端街に出て行っちゃうんだもの。そりゃ、人間の一人や二人、噴水に突き落とすわよねぇ」

まったく呆れた、とレンリは2階――おそらくユーリの眠る部屋――を眺めて言った
加えてごめんなさいとも
それにクラウドは首を横にふった

「俺も考え事してたし……お互い様です」

「…そう言ってもらえると、助かるわ」

ふふっ、とレンリは笑い、ありがとうと呟いた










レンリが鉄を打ちに戻り、ヒビキが設計をはじめる中、クラウドは製図台の横に座っていた
たまにヒビキの手元を見てはその細かさに目を瞬く
退屈ではなかった
視線を巡らせれば見たことのないものが次々と視界に入ってくる
そんな時だった
誰かの気配に気付きクラウドが顔を鍛冶屋用の入口に向けたのは
同時に鳴る、電子音

「すみませんクラウド、今、僕も姉さんも手を離せません。かわりに……」

「わかりました。こっちに通せばいいですか?」

顔を上げずに言ったヒビキの言葉を遮り、クラウドは立ち上がった

「はい。お願いします」

とたたた、と、入口まで駆けて行く
ひとつ深呼吸してから、そっとドアを開いた
目に入ったのは、黒一色

「……?」

不思議に思い視線を上げていき……クラウドは固まった
輝く銀髪に精悍な顔
魔晄を秘めた翡翠の瞳の中央にあるのは縦長の瞳孔
間違えるわけがない

「セ…フィ、ロス?」

かの有名な英雄が目の前にいる
まるで時間が止まったようにクラウドも、セフィロスも、動かない
否、クラウドは動けない、のだが
翡翠に見つめられる
その瞳にまるで鏡のように自分が映って見えるのは気のせいではないのだろう

「はい、そこまで!!」

ぱんぱん、と渇いた音が響く
やっと時間を取り戻したしたクラウドは音源を振り返った

「ユーリさん」

「ダメだよクラウド。そんなに見つめてると食べられちゃうからね」

「え!?」

そんな事するわけないだろう、と言う意味を込めてセフィロスにはたユーリを睨んだが、怯む事はない

「正宗について姉さんから話があるって。こっち来て」

「……わかった」

ぽん、とセフィロスは目の前にある金髪を撫でてから案内をするユーリの後についていった





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